スポーツネットワーク
topページへ
スポーツバンクへ
オリジナルコラムへ
vol.333-1(2006年12月25日発行)
松原 明 /東京中日スポーツ報道部
「GMの過労」

 フロリダで開催されていた、大リーグ、ウィンター・ミーティングの期間中、カブスのジム・ヘンドレーGMが心臓発作で入院する事件があった。

 幸い、3日間の入院で済み、無事にホームのシカゴへ帰ったが、チームの運営責任を背負うGMの仕事はいかに過労か、を考えさせられる事件だった。

 大リーグのGMは、チーム組織作りの全責任を負い、FA選手の獲得、移籍、ファームの育成まで、戦力面のすべてを任される重要なポスト。

 その能力を買われて契約するが、オーナー自らが面接して「キミに任せる」と、任命された。チームがうまく行かなければ、例え契約中でも、即座に解任されることも、しばしば。

 カブスは、昨年、ナショナル・リーグ中地区の最下位に転落。シーズン終了と同時に、黒人監督、ダスティ・ベイカーは解任され、ヘンドレーはチームの再建に奔走。その途中のウィンター・ミーティング開幕2日目の出来事だった。

 新監督に、タンパベイ・デビルレイズやシアトル・マリナーズの監督を務めたルー・ピネラを迎え、FA選手の獲得に、全精力を傾けていた矢先。GMの苦しい様態を見ていたピネラは、自ら自分の車で、ヘンドレーを病院へ運び緊急入院。これまで、心臓発作もなかったGMだが、過労、睡眠不足、ストレスが重なった結果だった。

 驚いたのは、病床にあるのにもかかわらず、携帯電話を離さず連絡を取り続け、FA獲得、移籍交渉の指揮をしていたことだ。GM補佐に懸命に指示し、「早く寝てください」と補佐が懇願するまで、電話を切らない猛烈な仕事ぶり。
まだ、51歳の働き盛り。高校、大学のコーチから、マイナーの現場、他球団のフロント修行を経て、2005年に、このポストへ上り詰めた。

 近来、ビジネスの拡大で、GMの仕事は、以前ほど多方面に渡らなくなったが、チームの成績を挙上げない限り、そのポストはなくなる。成否は紙一重。

 ヘンドレーのオフは、まだ終わらない。倒れても、彼は走り続けなければならない。だれも、同情はしてくれないのだ。

筆者プロフィール
松原氏バックナンバー
SAバックナンバーリスト
          
無料購読お申し込み

advantage
adavan登録はこちら
メール配信先の変更
(登録アドレスを明記)
ご意見・ご要望
 

Copyright (C) 2004 Sports Design Institute All Right Reserved
本サイトに掲載の記事・写真・イラストレーションの無断転載を禁じます。  →ご利用条件