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vol.333-1(2006年12月25日発行)
大島 裕史 /ジャーナリスト

野球国際化元年の明暗
 〜今年のスポーツを振り返る@〜

 あまりにも多くの課題、問題はあったものの、初めてメジャーリーグの選手も参加して野球世界一を決めるWBCが開催された今年は、本当の意味での野球国際化に向けた元年と言える。これまで国内の試合を重視していた日本やアメリカの野球ファンにとっても、国際試合ならではの緊張感が持つ面白さは、新たな発見であった。

 日本の優勝、ベスト4に進出した韓国の善戦は、アジアの野球の存在を世界に知らしめた。松坂の高額な移籍金も、WBCでの活躍が後押ししたのは間違いない。

 その一方で、WBCでの活躍にともなう代償も少なからずあった。

 WBCに多くの選手を送り出した千葉ロッテ、福岡ソフトバンクはともに精彩を欠き、小笠原1人の北海道日本ハムと、谷繁と福留2人だけの中日が日本シリーズを戦ったことは、皮肉な現象であった。

 準決勝で敗れたものの、1次リーグ、2次リーグと日本に連勝し、アメリカをも破った韓国は、さらに厳しい1年となった。初戦の台湾戦で、闘志溢れるヘッドスライディングをしてチームの士気を高めた金東柱は、その時の負傷でシーズンを棒に振った。主将として韓国チームを引っ張った李鍾範も不振が続き、2軍落ちしたこともあった。

 WBCでの善戦を起爆剤に、シーズンの盛り上がりを期待した韓国プロ野球関係者の期待は外れ、天候不順もあって、観客数は伸び悩んだ。

 巨人の主砲として孤軍奮闘の活躍をした李承Yにしても、疲労が蓄積した膝が、夏場に悪化した。今年の韓国シリーズは例年以上に負傷者が多く、選手たちは明らかに疲労困憊していた。

 さらに韓国は、11月にアジアシリーズ、12月にはメンバーの大半をプロで固めたアジア大会があり、全力のプレーが求められた。1月中旬にスタートしたキャンプに始まり、12月まで休みなく続く強行スケジュールに、アジアシリーズに出場した三星のコーチは、「無理だよ、無理」と言って嘆いた。

 その嘆き通り、アジアシリーズで韓国は日本、台湾のチームに敗れ決勝進出を逃がし、アジア大会に至っては、プロで固めた台湾のみならず、アマチュアの選手が出場した日本にも敗れた。韓国内で春に起きた賞賛の嵐は、秋から冬にかけて大バッシングに変わった。さらに心配なのは、この1年酷使された若手選手の疲労が、来年のシーズンにも影響を及ぼすことである。

 野球はどのレベルのピッチャーが、どこまでキチンと調整して試合に臨むかによって、勝敗が大きく左右されるスポーツである。しかも、1人のピッチャーが投げる球数にも限界がある。

 野球の国際化を実のあるものにするためには、蓄積のあるサッカーのようにはいかないまでも、国際レベルのスケジュール調整が不可欠である。日本では既に、来年の秋も国際試合の予定が目白押しである。国際化は大いに推進すべきであるが、気の抜けた試合は興味をそぐことになる。まずは、日本を中心とした東アジアだけでも、目先の利害にとらわれない真摯な議論を期待したい。

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