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vol.302-2(2006年 5月24日発行)
杉山 茂 /スポーツプロデューサー

ワールドカップで「アメフットの市」を


 来年7月、川崎市(神奈川県)を戦いの舞台にアメリカンフットボールの第3回ワールドカップが開かれる。

 このスポーツで国際的なタイトルイベントが開かれているのは、あまり知られていないが、ベースボールに比べればはるかに“世界”を視野にいれ、ヨーロッパでの国際リーグも健在だ。

 来年の大会は、ノン・プロフェッショナルチームながら、ついにアメリカ代表が参加する。

 これまでの2回(99、03年。いずれも日本が優勝)、本家アメリカが腰をあげず、チームのレベルはともかく、どこかに味気なさがあった。

 相手の力が整わないなか、最高峰のプロフットボール(NFL)が登場してきては、かえって大会の興味が薄れる。スポーツには、こういうことがある典型とも言えるが、それが「アメリカ」の欠ける総ての理由にはならない。

 NFL勢に9日間で全日程をこなすイベントへ出てくれというのも無理な話、当分は「アメリカ!!」の響きだけで充分にフットボール、だ。

 3連覇を意気ごむ日本は、ビッグネームの登場で、挑み甲斐がふくらんだし、大会の関心も高まる。

 このあたりのムード作りが、日本のスポーツ界やファンは上手になった。

 今春のワールド・ベースボールクラシック(WBC)も、一時はどうなることかと思えたが、誤審問題や韓国戦連敗で、一気に熱っぽくなるきっかけをつかんだ。

 ところで、会場地となる川崎市は、これを機会に「アメリカンフットボールの市(まち)に」と意気ごむ(5月22日、記者会見)。

 スポーツにしろ、芸能にしろ、趣味にしろ何から何まで手を出し、品揃えする時代ではなくなった。

 その市ならではの特定された看板スポーツを掲げるのは素晴らしい。

 その成功には、スポーツ側が補助金依存体質から脱け出て、地元とともに、さまざまな展開を共同して試みる姿勢が欠かせない。

 えてして、スポーツの盛んな地域とは、強いチームの存在や、愛好者数だけに左右される。そうではあるまい。

 「アメフットの市」も、まず市側がボウル型のスタジアムを建て、そのあとの経営をフットボール側が受け持つ。周辺は楽しげな商店街、食品街などを創る、フットボール情報街も並ぶといった具合だ。

 来年のワールドカップが、新しいスポーツ都市づくりの“キックオフ”にならないものだろうか―。

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