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vol.309-2(2006年 7月12日発行)
杉山 茂 /スポーツプロデューサー
巨額の放送権交渉を前に重なる課題

 2010年南アフリカで開かれるFIFAワールドカップで、国内放送界の最大関心事は、アジア大陸への出場枠数だろう。

 今回は4.5。前回(02年)はホストの日本と韓国を含めて4.5。98年大会が3.5。その前3大会は2ヶ国でおさめられていた。

 次回も4.5が期待できる、という声も聞かれるが、これは、オーストラリアがアジア予選に加わってくるからだ。

 これまでなら、歓迎ムードだろうが、今回の顔合わせで、この国のパワーを思い知らされた。4.5が確保されても、1はこの国にさらわれてしまう心配がある。

 まして、ほかの大陸からドイツでのアジア勢の甘さをつかれて、4に留まらず3.5に舞い戻ってしまっては、道のりの険しさは、いまから察しがつく。

 この数の展望が開かなくては、日本の放送権料交渉はスタートを切れない。

 “不安要素”は狭き門のほかにも横たわる。

 今回同様の時差(7時間)、誕生が確定的な「オシム・ジャパン」は、監督の力量以外、あまりにも未知数だ。

 しかも、広告代理店・電通が握る放送権料は、200億円に近くなるのでは、とみられる。

 買い手は、2010年大会も民放+NHKを軸にCS有料波(スカイパーフェクTV!)が、その色を濃くして参加する“新連合”ではないか。

 民放+NHKの「ジャパンコンソーシアム」は、その前に、国際オリンピック委員会(IOC)と交渉進行中の2010年バンクーバー冬季、12年ロンドン両オリンピック放送権をまとめあげなければならない。

 こちらは250億円ラインの“攻防”で(注・トリノ冬季=約43億円、08年北京=約199億円)、簡単に折り合いがつくとは思えない。

 つねに限界、とされながら、結局は、巨額で手を結ぶことになるのだが、サッカー以上に“日本の実力”を読みにくいのが悩ましい。

 放送界はワールドカップ、夏、冬のオリンピックと3イベントの“評価”を改めて行いなおすのでは、との見方もあるが、“連合”の姿勢は、もはや崩すに崩せない。

 不動と思える状況を乗り越えて新しい枠組みの動きが起こる気配はいまのところ感じられないが―。

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