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vol.327-2(2006年11月15日発行)
杉山 茂 /スポーツプロデューサー
「日米野球」は本当に使命を終えたのか

 「日米野球」の使命は終わったような球界発の論評がめだつ。

 かつては、メジャーリーグ選抜といってもビッグネームが揃うわけではないし、来日したスターも所せんは観光気分、などとアメリカ側の姿勢を冷めた目で見たものだが、近年は様相が変わり、今秋(11月8日閉幕、日本側5戦5敗)は、日本側の有力選手が、さまざまな理由で出場をことわり、その数は25人に及んだ、とされる(=各紙)。

 フアン投票を呼びかけて出場選手を決めようとしながら、この有様(ありさま)。

 一昨年夏の騒動で「フアン第一」を誓い直したのは、その場かぎりのジェスチャーだったのか、と言いたくもなる。

 「日米野球」は、いつもベースボール王国同士の“真剣勝負”とマスコミが興行の先棒(さきぼう)をかついだ。

 スーパースターがシリーズ終了を待たず帰国してしまうようなケースが繰り返されても、フアンは“親善試合”と割り切って熱くもならず、メジャーの味をエンジョイしてきた。

 日本・アメリカ間の距離が縮まり“半真剣勝負”のシーンが少しづつ増えた最近の流れは、ようやく「日米野球」の意義が実りかけてきた。そのタイミングで、使命は終わったとするなら、勝手がすぎよう。

 今秋のシリーズでメジャーリーグ側が全勝を飾った。この快勝は1934年以来72年ぶり。72年前といえば、ベーブ・ルースが来日した時になるのだから、もはや昔ばなしだ。持ち出された記録も照れくさかろう。

 「日米野球」は、日本側に“真剣さ”が戻れば、まだまだ魅力のある企画である。メジャーリーグのテレビ中継日常化で、相手への関心は高まっている。

 それなのに日本側がベストな顔ぶれを並べられず、あげくのはては打ちのめされて幕引きとするのは、あと味が悪い。

 フアンはいつもこうした役どころを引き受けさせられる。

 メジャーリーガーは、つねに“親善ムード”にあふれながら、それなりのパフォーマンスを見せて、スタンドのご機嫌をとり結ぶ。

 日本選手の辞退続出は、その芸域に届かないのを悟ってのものか。

 日本・アメリカ間のプロ意識の差は開いたままだが、日本のフアンはメジャーリーグの本拠地ふうな声援も聞かせて、ぐっとアメリカへ近づいている。

 テレビスポーツとしても、プロ・ベースボールは、日本国内でますます“空洞化”を招くのではないか―。

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