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vol.329-1(2006年11月29日発行)
杉山 茂 /スポーツプロデューサー
競技外の思惑囲むドーハ・アジア大会

 アラビア半島で初めて開かれるアジア大会(カタール・ドーハ、12月1日開会式)。

 1951年3月、ニューデリーで行われた第1回大会は6競技、それが今回は39競技(424種目)にまでふくらんだ。

 オリンピック競技に加えてアジア独得の“民族スポーツ”にも門扉を拡げるうちに“巨大化”したものだ。

 主催者のアジア・オリンピック評議会(OCA)も、さすがに歯止めをしなければ、開催地の負担が重くなるばかりと、一線を引くことを考えはじめたようだ。

 ドーハ大会も、一時はベースボールなどの除外が伝えられ、適正規模を探る動きをのぞかせたが、結局は「史上最高」で幕をあける。拡大から縮少への変換は難しい話で、はたして、4年後の広州大会(中国)が、新しいサイズで行われるものか、しばらく議論が繰り返されよう。

 オリンピック(夏季大会)は、2012年のロンドン大会で、削除が決まったベースボールとソフトボールの代替競技を選ばず、今後は26競技を軸に、1〜2競技を加えた規模を“標準”とすることに落ち着いた感じである。

 放送権を含めたマーケティングが好調といっても、莫大な経費が開催地にのしかかるのは間違いない。

 この面で、オリンピックとの差がありすぎるアジア大会の現状は、抑制に向かっても不思議ではないのである。

 例えば日本(NHKとTBS)の放送権料は6億円程度とみられ、北京オリンピックにジャパンコンソーシアムが合意している約209億円(1億8000万ドル)とはとても比べられない。

 ただ、テレビ放送(中継)自体はアラブ諸国の各局がかつてない力の入れようで、地元局をはじめ総計で2000時間を超えそうだ。

 映像の制作には、ヨーロッパのプロダクションやNHK(体操)など、経験豊かなスタッフが招かれている。

 日本オリンピック委員会(JOC)は、ドーハ大会の“勝算”を「金メダル42〜58個」と、かなり慎重な言いまわしをしている。

 ここでの戦果は、2016年夏季オリンピックを招致したいとする「東京」にとっても影響がゼロではなく、注目される。

 アジア大会開幕のタイミングをとらえたように「東京」の最大難敵・アメリカは、その候補都市をシカゴとロサンゼルスにしぼったことを明らかにした。

 アメリカ・テレビ界は、いずれにせよ2016年は「我が国で」と自信にあふれた表情を浮かべている、と言われる。

 ドーハも2016年に名乗りをあげることを検討している。

 競技の場の外側で、いつになく“騒しい”アジア大会と言えそうだ―。

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