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vol.352-2(2007年5月16日発行)
葉山 洋 /マーケティング・コンサルタント

じゃんけんぽん

 オーバーザトップという映画を憶えておいでだろうか。

 シルベスター・スタローン主演の腕相撲の映画だ(1987年公開)。離れて暮らしていた息子と心が通い合うプロセスが泣けたが、何と言ってもクライマックスは実写をふんだんに使ったラスベガスでの世界選手権決勝シーンだ。

 日本の腕相撲とは多少ルールが違うそうだが、アームレスリングという「スポーツ」がこれ程までに熱狂的に支持されていることに驚いたし、さすがアメリカならではのショーアップに感心した。たかが腕相撲と侮ることなかれ、である。

 ラスベガスはギャンブルの町だが、ホテルの特設会場ではファミリー向けを中心にさまざまなイベントが常時行われている。ミュージカルやコンサートが多いが、スポーツでは圧倒的に格闘技だ。しかし、先週末2日間にわたってマンダレーベイ・リゾート・アンド・カジノで開催されたイベントは果たして格闘技と言ってよいものか、意見が分かれるところだろう。

 USARPS*。全米ロック・ペーパー・シザーズ(岩・紙・鋏)選手権。日本語にすれば、グー・パー・チョキ。何のことはない、じゃんけんの全国大会である。

地方予選を勝ち抜き、全米大会に駒を進めた「選手」は298名。小さなテーブルを挟んで向き合った選手は、レフェリーの合図で3セット(1セットは3回のじゃんけん)を闘う。2セットを制した選手が勝ち抜くトーナメント方式だ。

 決勝戦をペーパー(パー)で制してトロフィーと優勝賞金5万ドル(約600万円)を獲得したのは、テキサスから参加したジェイミー・ラングリッジ。30歳になる看護士だ。

 鋏が発明される前から存在したとされる「じゃんけん」は世界中で行われるプリミティブな遊びである。パーティなので参加者全員が100円ずつ握り締めて勝負する。誰もがそんな経験をしたことがあるだろう。100円でも100人いれば1万円になるのだからエキサイトする。

 実は僕も数年前に参加した中学の同窓会で見事に勝ち抜き、優勝賞品として都内ホテルの宿泊券をゲットしたことがある。偶然か、読みか、確率か? メンタルな側面はスポーツ的要素を感じさせないこともないが、USARPS主催者の「オリンピック種目を目指す」というのは完全に冗談だろう。

 この大会を真面目にスポンサーしたのはアンハイザー・ブッシュ社。バド・ライトである。全米各地の流通ネットワークとのコラボレーションで、バーや飲み屋で予選を開催し、300人近くのファイナリストをペアでラスベガスに招待した。なかなか優れたインタラクティブ性の高い「スポーツ」マーケティングではないか。

 決勝大会の模様は7月7日、ESPNで録画中継されるという。
*公式ウェブサイトはhttp://www.usarps.com

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