サッカーのクラブワールドカップ、ACミランと浦和レッズの試合をテレビで見ながら、自分がサッカーを担当していた時代との違いを考えた。2000年、世界の強豪クラブを集めた第1回世界クラブ選手権がブラジルで開かれたが、思ったほどには注目を集めず、翌年の大会はマーケティング会社「ISL社」の経営破たんで中止。その後、数年間は再開のメドが立たず、クラブの世界一を争う大会は「企画倒れ」に終わったかのように思えたものだった。
しかし、欧州王者と南米覇者によって争われていたトヨタカップが、世界クラブ選手権を受け継ぐ形で05年から新大会をスタートさせた。それがクラブワールドカップである。昨日、横浜国際総合競技場であったACミラン・浦和戦は6万7005人の観衆が集まった。後半途中までは0−0の接戦。最終的には1点差で浦和が敗れたが、イタリア・セリエAの一流クラブを相手に浦和が善戦する展開は最後まで目が離せなかった。
浦和がアジアチャンピオンズリーグ(ACL)で優勝を決めた埼玉でのセパハン(イラン)戦の時も、約6万人の観衆がスタジアムを埋めた。クラブチームのアジア規模の大会にこれほどの観衆が集まるのは、かつてなら想像もできなかったことだ。ACLは02−03年シーズンから始まった大会であり、歴史は浅い。だが、翌日の新聞は一般紙でさえも浦和の優勝を一面で掲載し、事の大きさを感じさせた。
ACL優勝からクラブワールドカップへと続いた浦和の戦いは、日本サッカーに新たな時代の扉を開いたといっていい。クラブの戦いが世界の頂点につながっていることが証明され、日本代表や五輪代表の試合ばかりに関心が高かったサッカーファンにも新たな価値観を植え付けた。
欧州では国代表の試合以上に、欧州チャンピオンズリーグがファンを熱狂させている。レアル・マドリードが世界のトップ選手を巨額マネーで次々とかき集めた時、レアルとスペイン代表を戦わせたら、どちらが強いのか、という議論をサッカー専門誌で読んだことがある。当然のことながら、世界のスター選手で構成されるレアルが勝つというのが結論だった。マンチェスター・ユナイテッド対イングランド代表では? バイエルン・ミュンヘン対ドイツ代表では? そうした比較をしたくなるほど、欧州ではクラブチームのレベルも商業的価値も上がり、国代表をしのぐほどまでになっている。
そんな時代が少し遅れて日本にも到来しつつあるのだろう。ファンには楽しみが増えていいかも知れないが、手放しで喜べるものでもない。選手たちはクラブでの国内リーグ戦、カップ戦、そして国際試合にも絶えず出場し、代表に選ばれれば、そちらでも高いパフォーマンスが求められる。過密日程が選手の体を消耗させ、結果的に試合のレベルが低下する。さまざまな問題点が欧州では指摘され続けてきた。事実、ACL優勝後の浦和はJリーグで鹿島に逆転優勝を許し、天皇杯でも4回戦で愛媛FCに敗れている。
浦和が記した歴史的な第一歩。その価値は大きい。しかし、異様な過熱が選手をむしばみ、サッカーを堕落させる危険性があることも自覚しておかねばならない。
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