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vol.426-1(2008年11月25日発行)
賀茂 美則 /スポーツライター(ルイジアナ発)
またも王座決定戦でもめそうなアメリカの大学フットボール

 アメリカの大学フットボールは佳境に入り、残りあと2週間。どのチームが全米王座決定戦に残るかでまたももめそうな気配である。全くよくも毎年のようにもめるものだ、と感心するやら呆れるやらである。

 全米王座決定戦は、ボウルチャンピオンシップシリーズ(BCS)というランキングシステムの1位と2位が対決し、今シーズンは1月8日でマイアミで行われる。BCS得点の3分の1は選ばれたチームの監督による投票、もう一つの3分の1は識者による投票、残りの3分の1は6つのコンピュータランキングによるものである。来週、番狂わせがなければ、南東部リーグ(SEC)の西地区チャンピオンのアラバマ大(BCS1位)と東地区チャンピオンのフロリダ大(BCS4位)によって再来週に行われる、リーグ優勝決定戦の勝者が一つの椅子を獲得し、敗者は脱落する。ここまでは何の問題もない。

 問題はもう一つの椅子である。現在BCS2位はテキサス大(.9209点)だが、3位のオクラホマ大が.9125点という僅差で追っている。来週に両者が対決すればいいのだが、そうはいかない。実はこの2チーム、すでに対戦しており、テキサス大が45-35で勝っているのだ。では、なぜもめているのか。テキサス大に負けたオクラホマ大がテキサス工科大(BCS7位)に勝ち、テキサス工科大はテキサス大に勝っているのである。つまり三すくみなのだ。

 ビッグ12は南地区と北地区に分かれており、北地区のチャンピオンはミズーリ大(BCS13位)で決定している。ところが南地区は、上に挙げた3チームが全て1敗で拮抗している。このうちの1チームが南地区のチャンピオンとなり、再来週のリーグ優勝決定戦、対ミズーリ戦に勝利すれば、全米王座 決定戦に臨むことになる。ここで問題なのは、三すくみの場合の南地区のチャンピオンの決め方である。何と、三すくみの場合、アメリカ南西部の地区リーグに過ぎないビッグ12のさらに半分、南地区のチャンピオンを、本来ならば全米各地のチームに投票する目的で組織されたBCSで決定する、というとんでもないルールなのだ。

 これがいかにとんでもないか。日本で言えば、東京六大学リーグで早稲田、慶応、明治が勝ち点で並び、三すくみになった場合、東京以外の日本中の「識者」にチャンピオンの決定を委ねる、ということなのだ。さらに、この「識者」というのが曲者で、3分の1は両チームのどちらかを良く思っていないかも知れない他のチームの監督による投票であり、もう一つの3分の1にはどこの誰だか良くわからない輩が入っていたりする。建築現場作業員が投票権を持って いたというニュースも流れたほどだ。

 現在BCS2位のテキサス大の来週の相手はこれまで4勝7敗と不振のテキサス農工大、かたやオクラホマ大の相手はBCS12位の強豪、オクラホマ州立大である。したがって、来週両者ともに勝利すれば、オクラホマ大のBCS得点がテキサス大を上回ると予想されている。この場合、オクラホマ大がリーグ優勝決定戦に進み、勝てば全米王座決定戦の出場資格を得る。テキサス大はオクラホマ大が負けて、棚からぼた餅が落ちて来るのを待つしかない。

 もちろん、来週に番狂わせがあれば、すべてのシナリオがひっくり返る。ここでまた新たなもめごとが起きないとは限らない。毎年蒸し返される、上位8チームによるトーナメント方式の王座決定戦の案が出て来るのは必定である。

 全くもって、全米王座決定戦の出場チーム選出の過程は毎年楽しませてくれる。実際の試合よりも、このプロセスの方がどきどきする、というのは筆者だけではあるまい。

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