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vol.424-2(2008年11月11日発行)
松原 明 /東京中日スポーツ報道部
「甘くなかったメジャーへの挑戦」

 2008年、日本から21選手が渡米。メジャー・リーグへ挑戦したが、新参加の選手は、壁に当たり跳ね返され、ことごとく結果を出せず、惨敗のシーズンに終わった。

 今季を通して成果を出したのは、レッドソックスで18勝をあげエースの座を守った、松坂大輔投手と中継ぎで大きな波もなく健在だった岡島秀樹投手だった。2年目で二塁手にコンバートされ、1番打者として、チームの牽引車になり、見事、最下位からリーグ優勝、ワールドシリーズまで出場した、レイズの岩村明憲内野手、そして、苦しみながらも200本安打を達成した、マリナーズのイチロー外野手の4人くらいだろう。

 新参加で成功したのは、ドジャースで先発ローテを守り、プレーオフでも2勝した、黒田博樹投手ただ1人だった。カージナルスを解雇され、フィリーズに拾われた田口壮外野手はチャンピオンになる幸運を手にしたが、シリーズでは1試合も出番がなく、優勝パレードの日に解雇通告。ドジャースのクローザー、斉藤隆投手も、右ひじ故障でプレーオフは出番がなかった。

 ヤンキース・松井秀喜外野手、アストロズ・松井稼頭央二塁手も、ともに故障で休み、松井秀は93試合、松井稼も96試合しか出場していない。マリナーズの城島健司捕手も後半、打力不振でベンチに下がり、今や、トレード要員にまでなっている。

 前半戦、攻守の働きでオールスターに選ばれた、福留孝介外野手も、後半は打率2割1分台の不振に転落。猛烈なバッシングに遭い、オフのトレード候補にまでなる天国と地獄の1年だった。マイナーのままに終わったのが4人。藪田安彦投手(ロイヤルズ)福盛和男投手(レンジャーズ)もマイナー転落。何とか、インディアンスの1軍ワクに残った小林雅彦投手も、9月以降は、出番もなかった。ヤンキースの井川慶投手も「結果を示せ」と、マイナーに落ちたまま、突き放された。

 今や、メジャーは完全な実績主義。結果が出せなければ大金の契約金、長期年俸保証の選手でも「必要ない」と判断され、容赦なく追放される時代になった。

大金選手を数多く抱えているヤンキースでも、3番・アブレイユ外野手、5番・ジオンビー一塁手もFAでは再契約しないほど、シビアだ。

 メジャーで成功するには、(1)文句なしの成績を残す(2)いかにチームに溶け込めるか(3)スムーズに首脳陣、選手とコミュニケーションをとれるか、が極めて大事になる。数多く渡米している中米のスペイン語圏選手は、大半は通訳など付けない。独力で英語をマスターして、いかに早くチームに溶け込むか、みんな、必死になっている。

 今季の挑戦組には、そのような環境順応の努力が足りなかったのではあるまいか。孤立していては、だれも助けてくれない。甘えていては、生きられない世界なのである。

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