スポーツ紙の報道によれば先日の9日、全日本野球会議の際に日本代表編成委員会は、2011年のW杯にオールプロ選手で結成したチームを派遣することに半ば決めたというのだ。正直、現在の野球界のお偉方は、日本野球を支えているのがアマだというのがわかっていないのだ。 この夏、私は北京オリンピックの開催前に2人の“ミスター”に会って取材をした。1人は“ミスター・アマチュア”こと元日本代表チームのエースであり、現在の日本生命監督である杉浦正則氏。もう1人は“ミスター・社会人”と呼ばれる三菱ふそう川崎の主力打者で、長年アマの日本代表チームの4番打者として活躍している西郷泰之氏である。両氏ともアマ選手だけで出場した国際大会で活躍、とくにアトランタオリンピックでは銀メダル獲得に貢献した。それだけに2人の“ミスター”は、プロ選手だけ出場したで北京オリンピック日本代表チームに残念がっていた。 杉浦氏がはいった。「我々の時代は、4年間かけて日本代表チームをつくりあげ、オリンピックに臨んでいた。オリンピックをはじめとした国際大会に向けて春と夏の年2回の合宿に出て、そこで振るい落とされると『ちきしょう!』と思い、さらに頑張る。合宿に呼ばれなかった選手は、参加した選手から情報を聞いて奮い立つ。だから、昔は社会人野球が活性化していた。全員がオリンピックを最大の目標にして、高いレベルで選手同士が切磋琢磨していたからね。それが今はプロ選手だけで日本代表チームが編成されるため、有望な高校生や大学生は社会人に見向きもせずにプロを目指してしまう。これでは社会人野球の存在が失せてしまう・・・」 高校時代まで両氏ともに無名選手だったが、杉浦氏は同志社大4年のとき、西郷氏は三菱ふそう川崎入社4年目にして日本代表候補に選ばれ合宿に参加。その実力を認められ日本代表チーム入りを果たし、オリンピックに出場しメダルを獲得したのだ。 杉浦氏も西郷氏も「やっぱり、プロにはワールド・ベースボール・クラシック(WBC)があるからね。その他の国際大会はアマが出場すべき。そうアマ選手のだれもが思っている」と強い視線で話した。 ところが、冒頭で述べたように3年後に開催されるW杯もプロ選手でチームを編成し、さらに、驚くことには1軍半の選手を主体にするというのである。 杉浦氏はこうもいった。「アマだけでオリンピックに出場していたときは、選手もスタッフも全員選手村に宿泊し、洗濯も選手たちでやっていた。ところが、プロが参加するようになってからは高級ホテルに泊まり、コックまで帯同している。ハングリー精神を失ったため勝てないのではないか・・・」 約20年前、社会人チームは200チームを超えていた。ところが、現在は80チームほどとなり、つぎつぎと休・廃部に追い込まれている。西郷氏が在籍する三菱ふそう川崎もこの秋で休部することが決まった。 アマチュア選手の活躍の場をことごとく奪っている野球界のお偉方は、何を考えているのか。とうてい私には理解できない。 |