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vol.442-2(2009年4月3日発行)
松原 明 /東京中日スポーツ報道部
「町田ゼルビアの苦闘」

 今季、サッカー社会人リーグのJFLに昇格、4位以内に入れば待望のプロ、J2に昇格できるチャンスをつかんだのが、町田ゼルビア。市の花サルビアと、市の樹ケヤキからの造語のネイミングで、東京都下町田市民41万人の後押しの市民クラブとして、懸命に努力中である。

 しかし、前途は多難のようだ。一番の問題点は、Jリーグの基準に合うサッカー場がないことなのだ。現在、町田市立野津田競技場をメイン球場としてプレーしているが、ここは第2種陸上競技場で収容6200人。Jの定める1万人以上の観客席にはとうてい満たない。昇格へ向けて、クラブ、町田市にJリーグを作る市民会が陳情し、石阪丈一市長は「仮設スタンドを設ける計画を出す」と、約束した。しかし、この野津田公園周辺住民から猛反対が起こり、3月17、18日の2日間、市議会の建設委員会では住民との合意を求める意見書を採択。継続審議になりいつ増設できるか、分からない。

 3月22日のホーム開幕戦に野津田を訪ねたが、どう見てもここに1万人のスタンド建設は無理ではなかろうか。道路も狭い。仮設スタンド建設の予定地、バック・スタンド背後は樹林、その後方には住宅。樹林を伐採しない限り、夜間照明は建てられない。これも住民が納得しない限りできない。さらに、交通アクセスの問題も大きい。町田駅、鶴川駅からバスは出ているが、町田からは約30分、鶴川からも20分はかかる。終点の野津田車庫からシャトルバスが出ているが、道路混雑は有名で、最悪の場合、行き帰りとも、1時間も掛かる不便さだ。

 ホームタウンに満足なスタジアムがないままスタートしたJ2のクラブは、2000年の水戸、2005年の草津があるが、水戸は10年かかってやっと今秋、水戸市内にプロ興行のできる球場が完成する。草津ではスタジアムはできず、前橋の敷島球技場に移転したが、拡張は出来ず、現在は正田スタジアム(県営陸上競技場)でプレーしている。水戸は笠松競技場でやれたし、草津も正田に定着した。ともに代案があったから、現在も活動できている。

 昨年、J2に昇格した栃木、富山、岡山は、いずれもすぐに使える立派な競技場を持っていた。栃木を除いてともにアクセスも便利。しかし栃木はJR宇都宮駅から往復無料のシャトル・バスを運行し、ファンの便宜を図る努力で開催にこぎ着けた。

 町田市近隣には、1万人以上収容のスタジアムはない。調布にある味の素スタジアムは、東京の2チームが専用使用中。あとあるのは、多摩市立競技場だけだが、ここも4200人収容の小ささだ。これまで、どのクラブも経験したことがない、ホーム・スタジアムがないという難問を解決しなければならない。すでに、ユニホームの胸スポンサーには小田急電鉄、背中に玉川学園がつき、大小の市民団体が応援し、一斉に走りだしている。マスコットも登場、応援歌もできた。クラブには下部組織もそろい、昇格へ十分な熱意は感じられるだけに後押ししたい。しかし、どうやって難問を解決するのか、クラブ首脳陣の手腕が問われる。

 昇格には「JFLで1試合平均3000人以上の集客を」と、規定されている。22日はほぼ満員だったが、有料観客数は1713人だった。スタッフ、ボランティアみなさんの一生懸命な姿は胸を打つものがあったが、サポーター、会員以外に一般ファンをどこまで集められるだろうか。

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