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vol.457-1(2009年7月27日発行)
松原 明 /東京中日スポーツ報道部
Jリーグの危機

 このコラムで指摘した「Jリーグの観客減少」の危機を、Jリーグは7月の理事会で初めて明らかにした。J1、J2の36クラブで約半数の15クラブが前年比ダウン。「お客が来ない」悩みは深刻である。最大の減少はJ2へ転落した東京Vの1試合平均8745人の減少。あの広いホーム「味スタ」は寒々とした不入りに悩んでいる。横浜FCも2916人、札幌も3765人の減少。J1には残ったが、京都は2856人も減り、最大の動員力を誇っていた浦和は5400人と大幅に減った。第2位の実績があった新潟も横ばい、平均716人しか増えていない。J2から昇格した山形は倍増の1万2636人になり、同じ昇格組の広島も4049人増えた。しかし、ともに、やっと1万2000人台以上を確保しただけで、財政は楽になったわけではない。

 経済不況の影響で、レジャー資金を各家庭が切り詰めるのは、社会の流れから当然の成り行きで、これを、いかに堀り起こすか努力しなければならないのに、Jリーグが全くやっていないのでは仕方がない。何か妙案があるのかと、会見を期待したら、Jリーグ・鬼武チェアマンは「原因は調査中だが特効薬はない。各地域で活動を続けてゆくしかない。最大限の努力を」としかコメントできないのには失望した。

 ファン動員の大きな失敗はオールスター・ゲームのファン投票を止めてしまったことにも一因がある。昨年から日韓対抗戦に切り替えたとき、投票を止め、関係者だけが選んだメンバーで披露した。オールスターはファンとリーグをつなぐ、唯一の接点。ファンはワールド・シリーズ、日本シリーズ、チャンピオンシップには参加できない以上、選手を選ぶ楽しみはこのオールスターしかないのだ。

 昨年、国立競技場で開催された第1回は、わずか2万7629人しかファンは来ず、ガラガラのスタンドで試合も完敗。韓国開催になる今年度は、ほとんどのファンが開催場所、誰が選ばれたのか、さえ知らないのではあるまいか。

 MLBのオールスターは投票開始の日から投票者と緊密な連絡を保ち、私が投票したとき、すぐに「投票していただいてありがとう。さらに続けてください」と、自宅に感謝メールが来た。投票時には、必ずEメールを記入するようになっており、「25回まで毎日投票できます。もう1回いかが」という案内も来る。このきめ細かいサービスこそ、プロの開拓精神ではないだろうか。

 Jリーグは全く情報発信もしておらず、理事会をやっても「資料ナシ」の連続。クラブの話題では「チームに聞いてください」とあるだけで、実行委員会も同じ。サポーターやファンへの情報提供が皆無なのでは、ファンが増えるはずはない。ホームページをもっと改良し、ファンの知りたい、聞きたい記事を載せ、引きつける努力をしないことには、苦境打開の道はない。

 かつて、プロ野球に挑戦したベンチャー事業の意気に燃えていたJリーグは消え、官庁のような状態では、前途は多難である。やればできることは、考えればもっとたくさんある。惜しみない努力をみんなでやらないと、本当に転落の危機ではあるまいか。

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