来年のワールドカップ準備のために組んだ、スコットランド、トーゴとの強化試合は、相手が満足なメンバーで来日せず、全く役に立たないまま終わった。観戦した方は「日本は強い」と、錯覚されたかもしれないが、「日本にベストメンバーが来るわけはない」という、これまでの歴史を繰り返しただけだった。それなのに「失望した」「ふざけるな」など、日本サッカー協会幹部からのコメントを聞くと「まだ、世界の中で、今の日本が置かれている立場が分からないのか」と、不思議な気がする。
世界サッカー界は、南アフリカ大会へ向けて、いかに調整するかに目が向いている。今回来日した両国は、予選敗退。夢が消えて次の準備もまだできない状態で戦意のないままの来日だった。「若手の育成に連れてきた」スコットランドや、内紛の上40時間もかかる長旅、時差ぼけで動くこともできないトーゴ。これでは、日本は自在にやれて当たり前である。
ようやく「こちらから行くしかない」と、犬飼会長は指令を出したが、「大きな大会もなく、W杯もない日本へ行くメリットは何もない以上、今後も満足な国は来ない」ことを覚悟しないと次へ前進しない。もう、年内は強化試合はない。来年も1、2月にはアジア杯、東アジア大会が組まれていてJリーグが3月に開幕すると、本大会までに海外修行のチャンスは限られ、「強い国と対戦して経験を積む」ことはできない。
このジレンマに悩む岡田監督は、東アジアで孤立する日本の立場にお手上げではないだろうか。キリン杯終了後、私はトーゴ・ベリ監督に質問した。「日本は南アフリカでほとんど試合経験がない。どう闘うか教えて欲しい」。監督は完敗のあとで控えめだったが、「日本は組織化されたいいチームだが、アフリカ代表とやればフィジカルが足りないのではないか」。その言葉の裏には「今のままでは勝てないよ。地元のアフリカ各国は怖いゾ」と、予言しているのである。
9月、オランダと欧州で対戦した日本代表が、残り30分で動けなくなり3失点し完敗した試合を踏まえての発言に違いない。「いくら60分間対等でも、サッカーは90分勝負なんだ」との意味も含んだコメントだった。「欧州の本場でやらないと、今以上のレベルにはいかない」と、欧州遠征団長・大仁邦弥氏(日本サッカー協会副会長)も認めた。しかし、常時欧州でもまれ、経験を積むことは不可能である。今後、どうやって国内での過密日程を克服してゆくのだろうか。
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