スポーツネットワーク
topページへ
スポーツバンクへ
オリジナルコラムへ
vol.473-1(2009年12月28日発行)
松原 明 /東京中日スポーツ報道部
「サポーターの後押し」

 湘南ベルマーレが12月5日、ケーズデンキ・スタジアム水戸でJ1昇格を決めた日、胴上げの興奮も冷めない湘南・反町監督が記者会見で述べた、サポーターへの感謝の言葉が一番印象に残った。監督は会見の間、2回もサポーターに対し感謝のコメントを口にした。これはJ2で10年間苦難のシーズンを過してきた湘南の現場、フロント、サポーターのかつてない結びつきを示すものだった。

 「アウェーの席からいっぱいになっていって、みなさんずっと声を止めないで、苦しいときでも応援してくれた。我々の背中を押してくれたことは間違いないですね。甲府戦からその雰囲気があって非常に感謝しています。普通、0−2から逆転するのは我々の力だけでは無理でしょうね」「試合前に選手たちに話ました。4連敗しているとき平恚」技場で横断幕に“自分を信じ、仲間を信じ、最後まで闘う”と出たのです。ここまで自分たちのやってきたことを信じて、隣にいる仲間を最後まで信じあって、最後の笛が鳴るまで闘う、と。最後の笛というのはシーズン最後の笛であり、J1へ行ける笛なんだ、と言いました。この自信と信頼感、1年間やってきた集大成として最後まで闘ったのが、いい方向に向いたんじゃないかと思います」

 4連敗とは第2クール、セレッソに逆転勝利し、勝ち点「4」差を付けて2位との差を広げた直後から始まった。福岡に2−0からロスタイムにまさかの逆転負け、さらに仙台、徳島、富山にも敗れ一気に4位に転落。チームはパニックになった7月下旬。しかし、そこから辛うじて踏みとどまった。ホームで敗れたのは、この4連敗の間の2敗だけだった。ホームでは仙台、セレッソ、甲府、鳥栖の4強にも一度も負けなかったのも、日増しに増えたサポーターの応援があったからこそだった。

 Jリーグの発表した「2009年観客動員白書」によると、J2では湘南が前年比150.2%で最大の伸びを記録している。すべてはこの夏以降の増加による勢いだった。

 今季、ホームの勝率は16勝2敗8分け、仙台(19勝2敗5分け)に次ぐ第2位の高勝率を挙げたホームの強さが勝ち点差「1」のきわどい3位争いを勝ち抜けた要因だった。

 バック・スタンドにいた湘南サポーターは「一般のお客さんに」と、席を譲り立ち見席しかないゴール裏スタンドへ移動したのも、この夏以降の時期だった。サポーターはバックスタンドの一般客も揺り動かし、次第に大応援を繰り広げた。これも昨年や今季前半には見られなかった現象である。これまで、どちらかといえば冷めていた平怩ノ、初めて鹿島や新潟で見られたファン一体の姿が起こりつつある。ようやく地域にサッカーが根付いたのではないだろうか。

 スタンドのシーズン席には、94歳の遠藤フミエさんも応援していた。いつも息子さん夫妻がエスコートして観戦に来るが、80%ものホーム試合に応援に来ている熱心さには頭が下がる。私の知る限りでは、Jリーグ最年長のサポーターである。

 湘南が開催した、オフのシーズン席会員への感謝の夕べには選手全員が花道を作り会員を迎えて感謝の笑顔を贈った。

 ホームタウンのひとつ、藤沢市も海老根靖典市長が音頭を取り、約300人のサポーターが昇格祝勝会も開いた。サッカー不毛の地、とさえ言われた湘南に初めて生まれたこの連帯感。これがさらにふくらむ予感もする、今季オフである。

筆者プロフィール
松原氏バックナンバー
SAバックナンバーリスト
          
無料購読お申し込み

advantage
adavan登録はこちら
メール配信先の変更
(登録アドレスを明記)
ご意見・ご要望

Copyright (C) 2004 Sports Design Institute All Right Reserved
本サイトに掲載の記事・写真・イラストレーションの無断転載を禁じます。  →ご利用条件