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vol.493-1(2010年6月7日発行)
松原 明 /東京中日スポーツ報道部
「大リーグの電子書籍化の波」

 大リーグ30球団が、毎年制作している「メディア・ガイド」は豊富な資料が満載で、取材に貴重な助けになっている。私は、大リーグ研究のため、10年余の渡米で、30球団を訪ね、全部のガイドを頂いて帰国。記事を書くために、大変有り難い、取材源になった。最近は、渡米の機会も減り、この種の資料が手に入らなくなったので、東京ドーム内の野球体育博物館図書室に行っては、最新の資料を読んでヒントを得てきた。

 博物館は、毎年2月になると、MLBオフィスへ依頼して、30球団のメディア・ガイドをまとめて贈ってもらい、図書室来館者に、公開してきた。ところが、今年は、贈られてきた、球団のメディア・ガイドは、7冊のみ。後は、USBメモリーに収められて「このメモリーから引用してください」と、新方針が示されたのである。

 パソコンにコピーして閲覧はできるが、一般の希望者には、簡単に操作できないので、資料を常時公開してきた、図書室は困ってしまった。メディア・ガイドばかりか、アメリカン、ナショナル・リーグの年鑑も、MLBのインフォーメイション・ガイド、審判特集ガイドも、全部、USBに収められているので、閲覧希望者には、全部をコピーして、読んで頂くしかなくなった。

 球団はメディア・ガイドを発行していないのではない。各地の球団は、地元では担当記者用に発行している分はあるのだが、前のように、大量に印刷し、多方面に配る、ことはしなくなった。つまり、手に入れたければ、現地へ出かけるて頼むか、送ってもらうしかない。日本へ送ってもらうのは、よほど、その球団とコネクションがない限り、断られる可能性が高く、期待薄である。アメリカはスポーツ関連の出版は盛んで、ボーダーズらの書店へ行けば、うらやましいほどの、貴重な、立派な書籍が並んでいる。

 しかし、やがては電子化の波に飲み込まれ、書棚から消えてしまうのではないかと、不安がいっぱいだ。本の形なら、いつでも、読むことができる。ちょっと捜したいときでも、すぐに取り出せる。

 日本野球機構も「紙の記録は減らしたい」方向に進んでいる。私は、長年収集したメディア・ガイドは、すべて野球博物館へ「後進の方の研究に役立ててください」と、寄贈した。私がいなくなったらこれら貴重な資料が散逸してしまうのを恐れたからだった。もし、将来、これら本の資料が制作されない時代が来たら、どうなるのだろうか?

5月末にマイナー2球団を訪問したが、いずれもメディア・ガイドは、用意されていた。「今後も作ります」と、フロント・スタッフは言っていた。書籍こそ、後世へ残す遺産だと、信じているのだが。

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