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vol.497-2(2010年7月22日発行)
松原 明 /東京中日スポーツ報道部
「成果を挙げた日本のレフェリー」

  南アフリカW杯で、日本代表以上の成果を挙げたのは、日本人レフェリー組である。審判は、主審、副審の3人が組んで担当するが、今回は、世界各大陸から90人余の審判が集められた。日本からは、主審・西村雄一(38)副審・相楽享(34)のコンビと、韓国副審・鄭解相(チョン・ハサン)=(39)=のトリオで臨み、4試合も担当する成果を挙げ、アジアの審判が、世界レベルであることを証明した。

  これまでは、ドイツ大会の上川徹主審組の3試合が最高で、西村、相楽両氏は、準決勝、決勝の第4の審判(予備)にも指名され、これ以上は望めないほどの起用だった。世界大会の審判は、国、大陸でメンバーを組む。事故、故障や、誤審が明らかになれば、チームごとに、即座に外される、厳しい判定が下される。この難関をくぐり抜け、開幕戦から、決勝まで、最後まで残れたのは、大変高い評価なのである。

  「2007年から鄭さんとトリオを組み、お互いにあうんの呼吸で、試合を進められるチームになったのは、自信を持っていた。常にベストのコンディションで臨めた」と、帰国会見、西村氏は満足そうに話していた。
南半球は今は冬。1700bの高地でもあり、体調を整えるのは、容易なことではない。西村氏は大会参加の前、特別許可を取って、高山の高地トレーニングに参加し、体調を大会へ合わせていた。

  今のワールドカップは技術の進歩で、すごいスピードでピッチを往復するハイレベルな試合になっている。主審がこの流れに追いつけないと試合は乱れてしまう、それを見事に乗りきった努力は立派である。
相楽氏は第1副審で、常にメインスタンド側のラインに位置する。これは両チームのベンチと近いため、すごいプレッシャーになった、という。

  ブラジルのドウンガ監督は日本のJリーグ、磐田に在籍していたため日本語で「貴方は間違っている」と、相楽氏におどしを掛けていた。その重圧の中で選手に負けないスピードで動き回るのは簡単ではない。
トリオは常に、担当チームを分析し「ブラジルはリードしたら、どう出るか。
負けていたらどう反応するか」の研究もし、流れに備えていた。

  あの広いピッチで、主審は間違いも起きるのは仕方がない。万能の審判はいないのである。それでも「毎試合、選手のために全力を出したい。誠心誠意を尽くそう」という強い覚悟があった西村氏である。

  もう1組、アジア代表のラブシャン・アルマトフ主審(ウズベキスタン)の西アジア・トリオが、準決勝まで5試合も担当したのは素晴らしい。
アルマトフ氏は、AFCの最優秀審判に選ばれた優秀な審判で、西村チームと併せて2組の成功は、「アジアの審判はいい」と、世界へ評価を高めた。

  これまでは、アジアの審判は後進国と、低い評価しかされていなかったのを思うと、欧州の審判が世界の主導権を握る中で、初めて扉を開けた歴史的な快挙である。これからも、審判を志す若者が続くことを祈っている。

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