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vol.507-1(2010年10月21日発行)
松原 明 /東京中日スポーツ報道部
「身の丈に合わない観衆の水増し」

 かねてからうわさがあったJリーグ観客数の水増し発表が、ついに明らかになった。J1大宮・アルディージャが、2007年の大宮ホームNACK5スタジアムのオープンから4年間に渡り観客数を不正上積み計上していた事件だ。その累計合計は11万1737人にもなり、この不正事実を渡辺誠吾社長は全く知らず、現場幹部2人が社長に申告せず勝手に行っていたのだから実に深刻な事件である。

 Jリーグは1993年の発足当時、川渕三郎チェアマンが「われわれは実数発表をする」と、宣言。どんぶり勘定だったプロ野球に大きな刺激を与えた。
昔のプロ野球は概算発表が恒例で常に実数に上乗せしたおおざっぱな入場者数だった。年間300万人突破など真相はまるで違っても平気でいた時代だったのである。それがJ・リーグの「プロ興行は、正確な実態を明らかにするのが使命」の改革方針に次第に姿勢を改め、正確に公表しJリーグと歩調を合わせてきた。その矢先の不正発覚である。

 「大宮だけではなく他のクラブもやっているのではないか」の疑惑が世間に沸けばこれまでの通算入場者もすべて疑われ、リーグが根幹からゆらいでくる大事件だ。

 大リーグは昔、入場者をゲートカウンターで数え正確な実数を公表してきたが、今や「チケットの販売枚数でカウントする」方針に変わり、実際球場に来ない人もあるので「本当はもっと少ないではないか」と、首をかしげる試合も少なくない。しかし、大リーグはその方針が統一されているから不正ということにはならない。

 Jリーグの観衆動員が次第にゆがんできた背景には鬼武健二前チェアマンが号令した「イレブン・ミリオン動員」にあるのではあるまいか。

 どのクラブも他クラブに負けまいとして、無用な背伸びをして身の丈に合わない客寄せがこういう事件を引き起こした。今の経済情勢ではJリーグの観衆が増えるのは非常に困難である。

 発足当時の初心に返りありのままの実態を明らかにし、サポーターに常にアピールてゆくのが正しい姿なのではないだろうか。

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