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vol.509-1(2010年11月5日発行)
松原 明 /東京中日スポーツ報道部
「マイナー育成の成果を挙げたジャイアンツ」

 ワールド・シリーズは、サンフランシスコ・ジャイアンツがテキサス・レンジャーズに4勝1敗で圧勝。56年ぶりの王座に就いた。

 開幕前はジャイアンツ優勝を予言した人はほとんどなく、だれもが昨年のヤンキース対フィリーズの再戦を期待していた。

 ジャイアンツは地区シリーズでブレーブスを、リーグ・シリーズでもフィリーズを破り最後もレンジャーズを相手にしない抜群の強さだった。この優勝の土台はドラフトで獲得しマイナーで育成した生え抜きの先発4人のローテがぬきんでていたことが見逃せない。

 エースのティム・リンスカム、右腕マット・ケインはともに26歳。左腕ジョナサン・サンチェスは27歳。一番若い左腕マディソン・バムガーナーは21歳。4人の共通点はドラフトで指名されマイナーで磨き、昇格してきたホーム育成選手である。

 今、資金のある大リーグでは他球団のエースを引き抜いて投手陣を作り、ポスト・シーズン進出へ備えるチームが少なくないが、4人とも自家製のマイナー育ちのチームで優勝したのはジャイアンツだけである。4人はすべて好投。相手の主力打者を沈黙させた。そろってこれほどの力を発揮した例も極めてマレである。

 ヤンキースは左腕C・C・サバシアをブリュワーズから、右腕A・J・バーネツトをブルージェイズから、ともに複数年契約して投手陣の柱に据え、フィリーズは右腕ロイ・ハラデイをブルージェイズから獲得して進出したが、ヤンキースは昨年こそ王座に着いたものの今季はレンジャーズに乱打されて、ワールド・シリーズへ進めなかった。そのレンジャーズでもマリナーズから得た左腕クリフ・リーがエースだったがワールド・シリーズでは2回ともKOされた。

 「大金投手が成功せず、育成選手が勝つ」のは近来にない快挙だ。金の卵を発掘し指名して育てるのは、全米に張るスカウト網とマイナーの育成システムがよほどうまく連動し充実していないと成功しない。それが、年代別に4投手を見付けたジャイアンツの素晴らしさは特筆される。これは大金FA時代に警鐘を鳴らす画期的なことではないか。

 投手陣ばかりか野手も、トラビス・イシカワ一塁手、パブロ・サンドバル内野手らのベンチ組もドラフト。4番に抜擢されたバスター・ポージー捕手も2008年のドラフト1位指名。わずか2年で主力選手になった急成長ぶりは目を見張るものがある。新時代を開いたジャイアンツの王座を心から喜びたい。

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