東北地方太平洋沖地震復興支援チャリティーマッチは、4万613人の満員のサッカー・ファンを集め成功した。
この大会の意外な収穫は、日本代表、Jリーグ選抜が練習を一般ファンに公開、そのすべてを見せてくれたことである。これまで代表の練習は、ほとんどヴェールに包まれ公開されたことがない。メディアにも非公開だから、一般ファンの方は試合当日しかチームを見ることができなかった。
本来はニュージーランド代表を呼ぶ強化試合だったが、ニュージーランドが地震、放射能被害を恐れて断ったのが、この慈善試合に変わりファンへ募金を呼びかけるため「それなら練習も公開しよう」と、発展。代表も了承して初めて実現した。
今回の代表は26人、Jリーグ選抜も20人を集め、その全員がワザを披露してくれたのだから、初めて代表の練習を目の前で見ることができたファンは大喜びだった。
各クラブではスターの練習は見られるが、46人もの、今や日本のトップクラスの選手が、同じピッチで真剣に練習する姿は、各クラブ、小中高校の選手、大学、JFLの関係者も参考になることは多かったはずだ。長居、キンチョウの2会場には、3日間、延べ3万5000人のファンがかぶりつきで夢中で見ていた。
目の前で選手の優劣、体調の差もはっきり分かる。取り組む姿勢も感じ取れたはずだ。ただ1人、個人トレーナーまで同行して全力で動く、最年長・カズの姿には、だれも深い感動を覚えてたのではあるまいか。だからこそ、だれよりも歓声が大きくカミナリのような拍手まで起きたのである。
こういう印象も公開練習がなければファンには伝わらなかった。ザッケローニ監督以下、イタリア人スタッフの練習方法も公開されて「ああいうやり方もあるのか」と、ヒントを得た人も少なくないだろう。
GKコーチ・グィードのキーパー練習方法は、まずバスケットボールのパスのように、受けては返すキャッチ運動から始まりボールをグラウンドにたたきつけて捕球練習、その高低も付け次第にキックから距離を伸ばしてゆくやり方も面白い。
フィジカルコーチ・アルバッテラもストレッチ体操から器具を入れてのジャンプ、ダッシュや、4つの各度からのシュート、ヘディング練習と、変幻自在。時間を忘れるほどの練習方法だった。
欧州組7人が先発した主力同士の前半30分までは、シーズン途中でベストの欧州組の素晴らしい動きが際立っていた。それも彼らはこういう密度の濃い練習を常に積み重ねているからこそ、と知ることもできた。
代表が非公開にするのは、相手に手の内を知られたくないからで、ある監督は選手に練習内容を一切しゃべるな、と厳命までしていた。
ニュージーランドが断ったため生まれた公開練習。しかし、そのもたらしたものはサッカー・ファン、選手にとって、またとにない贈り物だった。願わくば、今後も公開練習は続けて欲しい。日本のサッカー前進のためにも、ノウハウの公開は大きなプラスだと、思うのだが。
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