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vol.535-1(2011年7月25日発行)
松原 明 /東京中日スポーツ報道部
「なでしこ、燃え尽き症候群の不安」

 世界一の金メダルを手に帰国したサッカー女子日本代表「なでしこ」のメンバーを待っていたのは、予想を超えて過熱するなでしこフィーバー。これが心配だ。

 フランクフルトでの決勝は午後8時45分にキックオフ、終了は11時を過ぎた。表彰式を終えて、やっとホテルへ戻っても休むことができず、わずか30分ほど横になっただけ。殺到する取材攻勢のなかで、緊張状態のまま帰国。さらに相次ぐ祝賀会、表彰、パレード、サイン会、またまたのテレビ出演。24日には、なでしこ・リーグが再開。これでは体を休めるヒマもない有様だ。

 9月1日から中国・済南で開幕するロンドン五輪アジア最終予選まであと1ヶ月しかないのに、この騒動でコンディションをどう保つのか、心配でならない。

 選手は生身の人間。不死身ではない。大目標を達成したあとの虚脱感が、必ず襲ってくる。この「燃え尽き症候群」は、日本の男子W杯出場選手にも過去に少なくないのである。

ガンバ大阪のMF遠藤も代表戦の連続出場の疲労蓄積で、いまだに体調を取り戻せないまま。川崎のMF中村憲もおなじだ。

 アジア予選は6カ国の総当たり、1回戦リーグ。タイは圏外としても他の5カ国は実力接近。どこが勝つても不思議でない激戦区。このリーグ戦で1、2位の2カ国しかロンドン五輪には出場できない。

 日本はW杯予選でオーストラリアに負け、3位決定戦で中国に勝ち、アジア3位で出場したほど、楽観できない相手ばかりである。狂乱の日本をよそに、W杯壮行試合で日本と引き分けた韓国は準備万端、開催国の中国、W杯8強で帰国したオーストラリアも怖い。W杯で薬物違反騒動(5人も出場停止処分)のピンチに立った北朝鮮も国の威信を賭けて再編成するに違いない。

 この予選がせめて年末なら不安はないだろうが、日程が1、2戦は中1日、3、4戦は中2日。代表戦の原則「48時間は空ける」というのも守られていない過密日程。頭では理解できても体が動かない。体は動いても判断が遅れるような状態では不覚を取る危険性は十分ではないか。

 日本代表・佐々木監督は「ターン・オーバー制」を考えて、2つのチームを作って臨む」構想だが、一日も早く代表組の心身の疲労回復を図らないとW杯は勝つたがオリンピックには出られない、という悲劇も起こるのではないだろうか。南米選手権でもサッカー王国のブラジル、アルゼンチンが消え、ウルグアイが優勝。サッカーの世界では何が起こるか分からないのだ。

 今大会で本命といわれた地元・ドイツが日本に敗退したのは、過剰な期待と2連覇していたために若返りが遅れたことで不安を抱えたままの大会だった、といわれている。

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