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vol.539-1(2011年9月15発行)
松原 明 /東京中日スポーツ報道部
「クラマーさんの提言」

 日本サッカー協会創立90周年記念式典に招かれ、ドイツから来日した「日本サッカーの父」デットマール・クラマーさんは、多忙な日程の間、日本サッカー史研究会の会合に出席、約2時間もサッカーへの情熱を披露し日本サッカー界への様々な提言をして帰国した。

 「私は日本を愛している。ついに、女子代表がワールド・カップ優勝の輝かしい成果を挙げたいま、よりよい未来へさらに進んでもらいたい」と、改革を提言した。86歳のクラマーさんの日本愛は、言葉のはしばしから伝わってきた。

 クラマーさんは、日本サッカー協会・小倉純二会長にも会い「さらに良くなるように手を打って欲しい」と、訴えた。「日本女子の勝利は走力が他国を上回ったからだ。私はあれほど走る女子チームを見たことがない。それが王座をつかんだ勝因だ」と、賞賛したのち「さらに、偉大なことをするためには努力が大切だ。後継者を育てるように、落ちていかないように、日本中でスカウティングを続け次の素材を捜す努力をして欲しい。選手層を広げ、タレント発掘のネットを張り巡らせて欲しい」と、続けた。

 環境の整備を力説したクラマーさんの提言は、すべて日本の置かれた現状を突いている。なでしこは疲労で倒れそうになりながらもアジア1位を譲らず、五輪への出場権を獲得した。その精神力にはただ脱帽するしかない。

 しかし、日本サッカー協会は、なぜ日本での開催権を取らなかったのだろうか。予選会場が中国ではなく、日本開催だったら、より日本のファン、サポーターの後押しが期待できたのではあるまいか。「経費がかかるから」という話が流れたのには愕然とした。これでは女子サッカーの発展は道遠しであろう。

 中国が多くの大会を主催し、普及、発展の努力を続けているのはやがて実るに違いない。日本の女子サッカーは中学校にも高校にも部活動がなく、この見通しもない。選手層は横ばいのままだ。クラマーさんはそういう環境改善のために努力することをアピールされたのだ。

 なでしこ・ブームが一過性のもので終わらないことを私は祈る。

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