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vol.540-1(2011年10月3発行)
松原 明 /東京中日スポーツ報道部
「イチローの殿堂入りは」

 マリナーズのイチロー外野手は、ついに3割も、通算11年連続200本安打の記録もとぎれた。彼も超人ではなかったのを、改めて確認した。周囲からは「まだ大丈夫やれる」という援護の声もあるがすでに37歳。現役引退の時期が迫ってきたのは確かである。

 どんな偉大なスターでも、必ずユニホームを脱ぐときが来る。ジョー・ディマジオも、テッド・ウィリアムスも、ミッキー・マントルも、みんな惜しまれて去った。私は「果たしてクーパースタウン野球殿堂入りができるか」不安があるのだ。これは、昨年のア・リーグMVP投票で全く問題にされなかった愕然とする事実があるからである。この投票は全米野球記者協会の現場担当記者投票(イチローのア・リーグは1都市2人、28人)で決まり、1位から10位までのポイント・システム。

 昨年は10年連続の200本安打の偉業を達成、打率もリーグ7位の3割1分2厘。上位にランクされるだろうと期待したのだが、何と得票した20選手中の17位。「ただヒットを打つただけではないか」と、無視されるとは驚きを隠せなかった。

 彼がデビュー当時シアトルへ取材に行ったが、幹事記者の代表質問を伝え聞くか背中越しの声しか取れず、とりつくしまがなかった苦い思い出がある。

 以後、現場取材は諦めた。この孤高の姿勢を続け、アメリカ記者にも通訳を経てからでないと聞けないようなムードになっていたのも得票がない背景にあるのではなかろうか。

 残した成果は、歴史に残る素晴らしいものだ。今後、日本人選手でイチローを超える選手は出てこないだろう。だから、引退後5年で資格のできるクーパースタウン入りを目指して欲しいのだ。

 MVP投票とは違い、クーパースタウン投票(例年1月に発表)は全米野球記者協会員581人(毎年投票者数は違うが)の投票で、75%以上の得票(昨年は436票以上)が必要な、いわば"人気投票"である。この75%超えは至難のワザ。毎年、実績のあるスターがあと一歩で涙を呑んできた。

 昨年はロベルト・アロマー二塁手が資格2年目でトップ当選、次点のバート・ブライルベン投手はわずかにクリアする、463票。あと1年で資格が消える14年目のトライでのゴールだった。実績は素晴らしいものがあったブライルベン氏もいろいろな言動がわざわいした、とも言われている。

 全米記者たちがイチローをどうとらえているのか成績が落ちれば容赦しない、全米野球記者の傾向から見て殿堂入りを支持されるか、不安は消えないのだ。晩節を汚さず、多くの記者に接してもらいたいと願うばかりだ。

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