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vol.547-1(2012年1月6発行)
松原 明 /東京中日スポーツ報道部
「Jリーグに夢はあるか」

 Jリーグのシーズンが終わった。j2で優勝し、いきなりJ1でも優勝する柏レイソルの躍進は見事だったが、さて気になるのは観客動員の急降下だ。

 私は、Jリーグの理事会会見で「ファンが大きく減っている。これではリーグ全体の危機ではないか」と、毎月同じ質問をし続けた。しかし、毎回大東和美チェアマンの答えは同じだった。「東北大地震、このための大幅な日程変更、週末に重なった天候不順が大きい」。観客動員ダウンの原因はそれらの悪条件があったのは確かだが、もっと重大なことを忘れている(あえて言えない?)のではあるまいか。

 12月11日附けの朝日新聞スポーツ面に福岡大学・乾真寛監督のコラム「Jリーガーに夢はあるか」の手厳しい意見が載った。「今や企業チームに進んだ方が給料が高い。Jリーガーは同世代のサラリーマンより収入が低い。Jリーグに以前のようなバラ色の夢が描きにくいのが現実だ」

 乾監督の言うことは正しい。「育成費用も払えない。勘弁してくれないか」と泣き言を言い出すクラブや「年俸240万円で我慢して欲しい」と交渉するチームも少なくないのが現実だ。

 これでは見たい選手は入って来ない。かつて多数やってきた外国人スターも、いまは誰もやって来ない。つまりJリーグをわざわざ高いチケットを買ってまで見に行く価値がない、と多くのファンが感じていることが大問題なのではあるまいか。

 昔を思えばサッカー・ファンは飛躍的に増えた。と同時に、だれもが高いレベルにあこがれを持つ。CWC(世界クラブ選手権)のバルセロナに、連日6万人を超えて満員になったのも「一目でもメッシやバルサのパスワークを見たい」と思う人は高額チケットも惜しまない。日本代表戦に来るファンは、本田、香川がどんなプレーをやるか」の関心があるからだ。

 今のJリーグには「見たい選手がいない。有望選手はみんな欧州へ出てゆくのでは、試合はテレビで見ればいい」となるからファンは減るのだ。このファンを引き寄せる魅力がないのは、プロの興行で一番の重大問題である。

新潟の田村貢社長は「どこも自前で選手を売り出す努力が足りないのでないですか。柏は自力でユース選手を育てブラジルから質の高い選手を連れてきた。この努力が報いられた結果だと思う。ウチで売り出した選手を引き抜かれる。これではやりきれない」と、現状を憂いていた。他のクラブ以上に、企業努力した柏の王座は偶然ではないのだ。

 今季のJ1は8年ぶりに年間500万人動員を割る、483万3782人。深刻な落ち込みだ。動員首位の浦和でさえ10万2717人も減少した。J1のクラブで前年比増加したのは、柏、福岡、神戸の3つしかない。

 「見に行く魅力がない」傾向は2012年も改善されないだろう。その上、ロンドン五輪、W杯予選、欧州遠征らの代表日程が詰まり、Jリーグの日程は編成に困るほど追い込まれている。いかに、ファンが自然に足を運ぶようなJ・リーグにするのか、チェアマンの陣頭指揮が見物である。

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