最近、よく「イチローは打率4割も打っているのに、使われないのはおかしい」という議論を耳にする。 ファンの見方からすれば当然の疑問だが、さて、現実は厳しいのだ。
彼はもう40歳。もう1人の40歳スター、デレク・ジターは故障から再起、連日プレーしているのと比べ、「イチローだってなぜ」と思うのは分かるが、いまのヤンキースは若返りの途中で、いかに早く若手を見つけ出し、新編成しなければならないのだ。
ジターは昨年から「今季限り」と、引退を表明し、いわば、今季は全米を回る引退興行になっている。だから、休養日以外は外せないのである。 実は、キャンプ途中、フィリーズへ、イチローのトレードを打診したが「40歳の老雄はいらない」と、不成功に終わった。生え抜きの看板スター、ジターと、途中加入のイチローとでは、チーム内の置かれた立場は違うのである。
ヤンキースは昨年オフ、レッドソックスからエルズベリー、カージナルスからベルトランの2人のFAスターを獲得。外野トリオ(あと1人は生え抜きのガードナー)で固めた。だから、イチローはこのトリオを休ませる時しか出番はなくなった。
ジラルデイ監督、キャッシュマンGMは、ともに、イチローの走塁、好守を認めてはいるが、それ以上は言葉を飲んでしまう。 練習でも打球は飛ばなくなった。明らかに体力の衰えは否定できない。出場12試合で二塁打1本しかなく、内野安打か、野手の間を抜くヒットだけだ。
内心、訴えたいことはあっても、首脳陣批判と取られては、ヤンキースにいられなくなる。彼の苦しい胸の内を察するしかいないのである。 |