この連載を1ヵ月以上も休んでしまった。申し訳ありません。言い訳をすれば、先月16日から日刊ゲンダイで「原発禍の街を行く」のタイトルで連載(月〜金)を開始し、どうしてもそっちのほうに全力を注がなければならなかったからです。
その連載も明日の1日で無事終了します。そこで日刊ゲンダイでは書けなかったことも多々あるし、まずは心新たにしてフクシマ・ルポに取り組みます。あらためて、今後もよろしくお願いします。
「岡さん、また放射線治療をしにきたんだ?」
3月初旬に帰郷。いつものように南相馬市の馴染みの飲み屋に行くと、マスターは苦笑しつつ言ってきた。 「悪かったな。明日は駅前からの代行バスに乗って竜田駅に行くんだ。放射能を浴びないと身体がうずくんだよ」
そう私が冗談を飛ばすと、マスターは手帳を探り、1枚のチラシを手渡してきた。 「乗るんなら、あくまでも“自己責任”ですからね。これを読んでから乗ったほうがいいですよ」
そのチラシには「常磐線 竜田駅〜原ノ町駅間代行バスご利用のお客さまへ」と書かれ、次の一文が記されていた。 《被ばく線量 国道6号線避難指示区域の南端(楢葉町)から北端(南相馬市)までの42・5qを時速40qで1回通行するに当って受ける被ばく量は1・2μ?です。(内閣府 原子力災害対策本部発表)》
正直、読んだ私はあ然とした。1回通行すると1・2?シーベルトも被曝するとは。また、それを承知して政権・政府は1月31日から代行バスの運行を認めたのだ。
さらにチラシを読んでおかしいと思うのは、単に「1・2?シーベルト」と書かれていることだ。これでは毎秒・毎分・毎時・・・なのかわからない。このへんが政府や東電のいつもの国民を馬鹿にした常套手段なのだ。ついでに言えば、放射線量の平均数値を表示する場合は、マックスとミニマムの数値も同時に公示すべきだろう。
ともあれ翌朝、私はJR原ノ町駅前6時50分発の代行バスに乗車することにした。が、JRの代行バスであるはずのバスは民間バス会社のものだった。 「JRの代行バスではないんですか?」
そう運転手に尋ねると、こういった。 「何でもJRがバスを運行すると、労組がうるさいらしいです。それでJRがバスを安く払い下げてくれて、うちの会社が運行することになったみたいですね・・・」
さらに私は尋ねた。 「双葉町や大熊町辺りの放射線は高いと思うけど、大丈夫ですか?」 「私ら運転手もこうして線量計を持っていますから・・・」
見ると運転席の横に線量計が置いてある。私は写真に撮らせていただいた。 私を含めて乗客5人はバスに乗り、国道6号線を南下。30分ほどで原発の町・双葉町から大熊町に入った。車窓から左手遠くに第1原発の排気筒が見えた、その瞬間だ。私が持参したウクライナ製の線量計は基準値の毎時0・23?シーベルトを大きく上回る約38倍、車内だというのになんと「8・63?シーベルト」を計測したのだ。ピーピーピーという危険音を発する線量計を見ていると、気分が悪くなった。私は心の中で叫んだ。
「放射能が襲ってきた!」 終点のJR竜田駅で降りた私はトイレに走った。うがいをし、顔を洗ってトイレから出ると、入口にこう表示されていた。
《平成17年度 福島県核燃料税交付金施設》 再び私は気分が悪くなった。
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