第34回ミズノスポーツライター賞
 

第34回ミズノスポーツライター賞発表(2023年3月6日)

2023年度 第34回 ミズノスポーツライター賞 受賞作品
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「2023年度 ミズノ スポーツライター賞」受賞者決定

 公益財団法人ミズノスポーツ振興財団では、1990年度から「ミズノ スポーツライター賞」を制定しており、2022年度で33回目を迎えます。この賞は、スポーツに関する報道・評論およびノンフィクション等を対象として、優秀な作品とその著者を顕彰するとともに、スポーツ文化の発展とスポーツ界の飛躍を期待し、これからの若手スポーツライターの励みになる事を願い制定したものです。
3月6日(火)、グランドプリンスホテル高輪で選考委員会を開催し、受賞作品および受賞者を以下の通り決定いたしました。
なお、この「ミズノ スポーツライター賞」の表彰式は、4月23日(火)にグランドプリンスホテル新高輪で行います。

■最優秀賞 (トロフィー、副賞100万円)

 『怪物に出会った日 井上尚弥と闘うということ』

 『怪物に出会った日 井上尚弥と闘うということ』
  森合 正範(もりあい まさのり)(発行:講談社)

【 受賞者及び選考理由 】
●『怪物に出会った日 井上尚弥と闘うということ』(講談社)
 森合 正範(もりあい まさのり)

 2023年12月26日に有明アリーナでWBA・IBFスーパーバンタム級統一王者のマ ーロン・タパレスを 10 回KOで下し、2階級での世界四団体統一を達成したばかりのプロボク サー、井上尚弥の桁外れの強さに独自の視点で迫った一冊である。東京新聞のスポーツ記者で ボクシングに精通する著者が、世界最高峰のボクサーの強さを、敗者を通じて語らせた一冊。
著者は学生時代の4年間、ボクシング好きが高じて「聖地」後楽園ホールで裏方のアルバイ トをした。その時に、試合前にボクサーへグローブを手渡し、試合後に受け取る仕事があった が、敗者のグローブが勝者のものより重く感じたそうだ。記者となってボクシングを取材する ようになり、井上の試合前インタビューを「週刊プレーボーイ」に掲載するようになった。
しかし、「怪物」の強さを伝え切れていないモヤモヤがずっと胸の内にあったという。ある時、 同じボクシング好きの編集者に「井上と対戦した相手を取材していったらどうか」と提案され、 このシリーズを始めた。
 稀有のモンスター的存在のボクサーをどう描くか、ボクシングという肉体とメンタルを極限 まで追い込んで闘うスポーツの迫力をどう伝えるか、自分が書こうとする対象、テーマに対す る著者の熱量、怪物井上尚弥と対戦し敗れた相手に話を聞くという発想・企画力、遠くはメキ シコやアルゼンチンまで足を伸ばしての取材、物語性のある構成、奇を衒わない抑制の効いた 文章表現、本書にはスポーツノンフィクションの真髄というべき要素が揃っている。
著者がスポーツライティングを意識することになったという山際淳司の「江夏の 21 球」以来 の、本格的なスポーツライティングになっていると高く評価したい。

  

■優秀賞 (トロフィー、副賞各50万円)


 『日本プロ野球の歴史 ―激動の時代を乗り越えて―』
 菅谷 齊(すがや ひとし)(発行:大修館書店)


【 受賞者及び選考理由 】
●『日本プロ野球の歴史 ―激動の時代を乗り越えて―』(大修館書店)
 菅谷 齊(すがや ひとし)

 書名を超えるような内容の一冊である。400ページ超の重量感のある作品のレベルは、推 薦者である慶応義塾大学池井名誉教授の「極めて魅力ある労作」という帯に抜き書きされた短 い評価がまさに言い当てている。
昨2023年は、3大会ぶり3度目のWBC制覇に始まり、大谷翔平の2度目のMVP獲得 に続くドジャースへの超高額移籍だけでなく、阪神タイガースの38年ぶり2回目の日本一、 プロ野球ではないが慶応高校の107年ぶりの甲子園優勝などが続き、人々の野球への関心は これまでになく高まった。本書の発行はまさに絶好のタイミングだったと言えるだろう。裏話 が満載の大小100本を超える興味深いコラムが随所に挿入され飽きさせない。巻末には年表 と文献資料を一覧にしてまとめるなど配慮が行き届いており、どこからページを開いても楽し く読め、眺められる。
 抑制の効いた中にもリズム感がある文体でたいへん読みやすい。著者は自らの思いを極力排 除し事実の正確な記述に努めたようだ。記者としての本分ということかもしれないが、時に感 情を表に出しても構わないのではないか。恐らく唯一、コミッショナーに関して「日本のプロ 野球の場合、(コミッショナーの仕事の)多くはトラブル解消の仕事に見え、大リーグとはか なり異なる。」とご自身の意見を記している(P219)。
作者はこの書籍化をプロ野球記者50数年の取材総括と位置づけ、全力投球をしたといえる だろう。「時代の移り変わりや難題を乗り越えて今日の姿があることを、後世に伝える機会が この出版だった」と振り返るが、自らもプロ野球史に名を刻んだのではないだろうか。

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主催:公益財団法人 ミズノスポーツ振興財団 
選考:ミズノ スポーツライター賞選考委員会

[制定目的]
 スポーツに関する優秀な作品とその著者(個人またはグループ)を顕彰し、 スポーツ文化の発展とスポーツ界の飛躍を期待するとともに、これからの若手スポーツライターの励みになる事を願い制定

[対象領域]
 【2022年1月1日~12月31日】に発行・出版・発表されたもので、主として新聞・雑誌・単行本等に掲載された個人もしくはグループで書かれたスポーツ報道、スポーツ評論、スポーツノンフィクション、など。ただし、インターネット上のウエブサイトなどで発表されたもの、社内報や広報誌等一般に販売されていないもの、一般の者が入手不可能な機関誌的なもの、翻訳書や専門学術書・誌、研究紀要等に掲載されたいわゆる学術論文はこの対象からは除く。

[表彰内容]
★最優秀作品 1本 (トロフィー / 賞金100万円)
☆優秀作品  2本 (トロフィー / 賞金 50万円)

[選考委員]

委員長河野 通和(株)ほぼ日「ほぼ日の学校長」、『中央公論』『婦人公論』『考える人』元編集長
委 員上治 丈太郎(一社)日本スポーツツーリズム推進機構 理事
 杉山 茂スポーツプロデューサー/元NHKスポーツ報道センター長
 ヨーコ 
ゼッタ-ランド
スポーツキャスター
 長田 渚左ノンフィクション作家
 水野 英人(公財)ミズノスポーツ振興財団副会長

※敬称略・順不動

【お問い合せ先】
「ミズノ スポーツライター賞」選考事務局
〒151-0053 東京都渋谷区代々木2-16-15 代々木フラット401 スポーツデザイン研究所
TEL:03(3377)4858 / FAX:03(3377)5028
お問合せ:こちら

過去の受賞記録
公益財団法人 ミズノスポーツ振興財団 のミズノスポーツライター賞サイトをご覧ください

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