第35回ミズノスポーツライター賞
 

第35回ミズノスポーツライター賞発表(2025年3月3日)

2024年度 第35回 ミズノスポーツライター賞 受賞作品
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「2024年度 ミズノ スポーツライター賞」受賞者決定

 公益財団法人ミズノスポーツ振興財団では、1990年度から「ミズノ スポーツライター賞」を制定しており、2024年度で35回目を迎えます。この賞は、スポーツに関する報道・評論およびノンフィクション等を対象として、優秀な作品とその著者を顕彰するとともに、スポーツ文化の発展とスポーツ界の飛躍を期待し、これからの若手スポーツライターの励みになる事を願い制定したものです。
3月3日(月)、グランドプリンスホテル高輪で選考委員会を開催し、受賞作品および受賞者を以下の通り決定いたしました。
なお、この「ミズノ スポーツライター賞」の表彰式は、4月22日(火)にグランド プリンスホテル新高輪で行います。

■最優秀賞 (トロフィー、副賞100万円)

 『パラリンピックと日本人 アナザー1964』

 『パラリンピックと日本人 アナザー1964』
  稲泉 連(いないずみ れん)(発行:小学館)

【 受賞者及び選考理由 】
●『パラリンピックと日本人 アナザー1964』(小学館)
 稲泉 連(いないずみ れん)

 本書は著者が2020年に『アナザー1964 パラリンピック序章』として出版したもの を新書版で再刊するにあたって加筆し、改題したものである。2020年の五輪開催地が東京 に決まり、マスメディアは「2020年のオリパラ」と略して称するようになった。著者は自 分が「パラリンピック」の歴史について何も知らないことを居心地悪く感じ、1964年のパ ラリンピックについて2015年から調べ始めた。
 パラリンピックとはそもそもどういう由来があるものなのか、大きく関わった中村裕という負 けず嫌いで型破りな医師の歩み、パラリンピックにおける「語学奉仕団」と皇室との長く深い 関わりとは。著者は道先案内をするように読者が次に知りたいと思うことへスムーズにテーマ をつないでゆく。
 パラリンピックに関わったさまざまな人々のエピソードを織り交ぜながら平易な文章が紡が れているが、その中に大きな模様のように4人のパラリンピック出場者の独白が挿入されてい て、とても味わい深い読み物になっている。この独白は、彼らの壮絶な体験が静かに語られる のをあたかも目の前で座って聞いているような感覚とともに、まさに生身の人の身体の声を聞 いている思いにさせられる。
 今から60年前、傷痍軍人は珍しくなかったが、本書でも度々言及されるように車椅子を見 かけることはなかった。そのような社会環境の中での1964パラリンピック開催は「はじめ の一歩」として意義深いものであったことは間違いない。「日本の障害者スポーツ事始め」を 紐解いてみる著者の試みは、地道な関係者への取材と丁寧な聴き取り、それをまとめあげる優 れた筆力、巧みなストーリー展開によって見事に成功している。

  

■優秀賞 (トロフィー、副賞各50万円)


 『暗躍の球史 根本陸夫が動いた時代』
 髙橋 安幸(たかはし やすゆき)(発行:集英社)


【 受賞者及び選考理由 】
●『暗躍の球史 根本陸夫が動いた時代』(集英社)
 髙橋 安幸(たかはし やすゆき)

 「球界の寝業師」などの異名をとる伝説のプロ野球人、根本陸男の人物像を掘り起こし、評 伝にまとめ上げた力作である。根本が活躍、あるいは暗躍した頃にはまだ若かった作者自身の 年齢差を考えると、構想力、取材力には優れたものがあり、リアリティに溢れた1冊である。 第1章では約100ページを費やして根本の野球人生の概略をほぼ語り尽くした。その上で、 第1章で言及された様々な出会いや出来事が愛甲猛から栗山英樹まで11名の「証言者」への 取材で浮き彫りにされる。それが第2章から12章にかけての役割だ。評伝の建付けとしては なかなかユニークである。
 さまざまな証言者の中には一部の読者にとってはあまり馴染みのない野球人が含まれているか もしれない。しかし根本の人となりや仕事ぶりを描写し、伝説に肉付けする上で当を得た人選 だと思われた。作者の取材は巧であり、引き出した発言とつなぎの文章はバランスが取れリズ ム感もある。
 20世紀後半を生きた根本の野球人生とは何だったのか。本人が晩年に吐露した人生観が興味 深い。「人間はゼロから始まってゼロに戻る。だったら、次々と高い次元を目指して挑戦を続 けていったほうが面白いんじゃないだろうか。・・・死ぬ前に、“オレの人生も悪くなかった”と 思えれば、僕はそれでいいと思っている。・・・」本書の表紙や扉の写真はまるでアクション映画 の一シーンのようだが、「昭和レトロ」が何かと注目される令和の今、昭和の人物伝として意 外にタイムリーな作品と言える。

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主催:公益財団法人 ミズノスポーツ振興財団 
選考:ミズノ スポーツライター賞選考委員会

[制定目的]
 スポーツに関する優秀な作品とその著者(個人またはグループ)を顕彰し、 スポーツ文化の発展とスポーツ界の飛躍を期待するとともに、これからの若手スポーツライターの励みになる事を願い制定

[対象領域]
 【2022年1月1日~12月31日】に発行・出版・発表されたもので、主として新聞・雑誌・単行本等に掲載された個人もしくはグループで書かれたスポーツ報道、スポーツ評論、スポーツノンフィクション、など。ただし、インターネット上のウエブサイトなどで発表されたもの、社内報や広報誌等一般に販売されていないもの、一般の者が入手不可能な機関誌的なもの、翻訳書や専門学術書・誌、研究紀要等に掲載されたいわゆる学術論文はこの対象からは除く。

[表彰内容]
★最優秀作品 1本 (トロフィー / 賞金100万円)
☆優秀作品  1~3本 (トロフィー / 賞金 50万円)

[選考委員]

委員長河野 通和(株)ほぼ日「ほぼ日の学校長」、『中央公論』『婦人公論』『考える人』元編集長
委 員上治 丈太郎(公財)日本スポーツ協会 評議員
 杉山 茂スポーツプロデューサー/元NHKスポーツ報道センター長
 長田 渚左ノンフィクション作家
 田中 雅美スポーツコメンテーター
 水野 英人(公財)ミズノスポーツ振興財団副会長

※敬称略・順不動

【お問い合せ先】
「ミズノ スポーツライター賞」選考事務局
〒151-0053 東京都渋谷区代々木2-16-15 代々木フラット401 スポーツデザイン研究所
TEL:03(3377)4858 / FAX:03(3377)5028
お問合せ:こちら

過去の受賞記録
公益財団法人 ミズノスポーツ振興財団 のミズノスポーツライター賞サイトをご覧ください

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