何組もの男女が過酷な冒険前の緊張感を高めてゆく。明日4月30日の早朝、オーストラリアの大自然を踏破する「レイド」レースの幕が切って落とされる。 クロス・アドベンチャー(X-Adventure)レイド・ワールドカップ2005の第1戦は、西オーストラリア州の州都パースから南へ約400キロ、デンマーク(国名ではない)の町を出発し、サウスウェスト海岸を中心に2日間にわたって展開される。シーカヤック、マウンテンバイク、クライミング、オリエンテーリング等で100キロ以上の距離を男女混合の4名からなるチームで克服するのだ。 世界各国から60チームほどが参加するクロス・アドベンチャー・サーキットは年4回開催され、ワールドカップと称されている。順位によって獲得したポイントの累積で最終戦に相当するレイド世界選手権への出場権が与えられる仕組みだ。今年のクロス・アドベンチャーは、第2戦がスウェーデン(6月4〜5日)、第3戦がアメリカ、オレゴン州(6月25〜26日)、第4戦がピレネー山脈の小国、アンドラ(7月23〜24日)で実施されることが決まっている。世界選手権は9月10〜15日、アルプスだ。 2001年の7月には北海道の積丹、ニセコ、洞爺湖をステージとして開催。多くの日本人チームが果敢に参加したが、今年のサーキットには今のところ日本からのエントリーはないらしい。 レイドを主催、運営するのはフランス企業のサガ・アドベンチャー(Saga
d' Advenures)だ。オフィスの所在地はエクセレバン。98年のフランス・ワールドカップで日本代表がキャンプ地として滞在した町だ。会長のアラン・ゲマールは1989年に第1回「レイド・ゴロワーズ」の運営に参画。以来世界最高のアドベンチャー・スポーツ、同時にエコ・スポーツとしてこのレースを育ててきた。 レイド・ゴロワーズでは5日から1週間かけ、厳しい大自然の中を1000キロ近くにわたり男女混合の5人のチームで踏破することが要求される。過去ボルネオ、オマーン、エクアドル、ヒマラヤ等が過酷なサバイバル・タイムレースの舞台となった。 ゴロワーズは有名なフランス煙草とは実は無関係である。ヨーロッパの中央部を席巻した勇猛果敢なケルト人。古代ローマはケルトの人々が住まう地域をガリアと呼んだ。ゴロワーズはフランス語でガリア人の事。勇敢なガリアの戦士を意味するのだ。 2003年アラン・ゲマールはそれまで別の競技として並存していたレイド・ゴロワーズとクロス・アドベンチャーの統合に踏み切った。伝統のゴロワーズをあえて捨て、レイド世界選手権と名称変更。クロス・アドベンチャー・サーキットを通じて高得点を挙げたチームが大陸別に設定された出場枠にしたがって世界選手権へと駒を進めるというスポーツ・イベントとしてのシステムを整えた。 現在クロス・アドベンチャー/レイド世界選手権を支えるスポンサー企業は2社。アウトドア・ギアのサロモンと車のSAABだ。参加チームは出場料を支払い、独自にスポンサーを開拓してレースに臨む。 驚異のスポーツ、レイド・ゴロワーズを日本に紹介したのはカシオ計算機だった。Gショック・シリーズの高性能モデル、プロトレックはレイド出場者に支給されるアドベンチャー・ツールのひとつとしてライセンシング契約を結び、アウトドア・スポーツの愛好家から高い評価を獲得した。典型的な実証マーケティングである。 プロトレックは私には少々大きすぎ、重すぎる。もちろんレイド・アドベンチャーなど有り得ないが、花粉も収まってきたようなので、ゴールデンウィークには里山でも散策して自然と接してみようと思う。 |