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平成17年度天皇杯全日本レスリング選手権大会 女子63kg級 伊調馨

(C)photo kishimoto

平成17年度天皇杯
全日本レスリング選手権大会
女子63kg級
伊調馨

 

SPORTS IMPACT
  オリジナルGALLERY
(C)photo kishimoto
vol.283-1(2005年12月28日発行)
大坪 正則/帝京大学経済学部教授

東京ヤクルトスワローズ

杉山 茂/スポーツプロデューサー
  〜「今どきの男子」突き放す女子の勢い〜
  −2005年を振り返るC−
岡崎 満義/ジャーナリスト
  〜おみごと! 福原愛選手の中国語〜
滝口 隆司/毎日新聞運動部記者
  〜迷路から抜け出せない企業スポーツ〜
谷口 源太郎/スポーツジャーナリスト
  〜大学スポーツの荒廃〜
葉山 洋/マーケティング・コンサルタント
  〜2005年スポーツマーケティング10大ニュース〜
市川 一夫/スポーツライター
  〜グランドの芝生化促進が進まない理由〜
   −何が阻害しているか?−

成田 重行/東北福祉大学特任教授
  〜明るい元気なニッポンづくり〜

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東京ヤクルトスワローズ
(大坪 正則/帝京大学経済学部教授)

 ヤクルト球団(ヤクルト)が球団名称を「東京ヤクルトスワローズ」に変更した。サッカーで根付いた地域密着の球団経営がプロ野球にも本格的に浸透し始めた象徴的現象として受け止めている。

 プロ野球では、地方都市の球団から地域密着型応援や経営が始まった。福岡
ダイエー(現在、ソフトバンク)ホークス、北海道日本ハムファイターズがそれである。それに、今年は、千葉ロッテマリーンズだった。ロッテファンは、選手や球団と一体感を保ち、爽やかで、参加意識溢れる応援を行うことで知られていた。ファンと選手の強い絆がリーグ優勝と日本シリーズ優勝で一気に開花した。仙台の楽天も、記録的負けにも関らず、地域密着の応援を初年度にして定着させた感がある。もはや、地方都市では地域密着のファンサービスが球団経営にとって不可欠になったと言っても過言ではない。そして、ヤクルトによる、最も地元意識の希薄な大都市「東京」でのフランチャイズ標榜である。

 2000年10月から2001年3月まで、営業力強化を目的にヤクルトのコンサルティングを行った。その頃のヤクルトは、リーグ優勝を果たすと翌年は下位低迷と言った浮き沈みの激しいチーム成績を続けていた。当然、優勝の後は選手年俸上昇が避けられない。経費が増えるにも関らず、増収の手立てが何も無く、球団の台所は火の車だった。そのような環境下で、ある放送局の仲介でコンサルティングを行うことになった。

 増収の一手段として地域密着の営業体制強化を推奨したが、当時のヤクルトはフランチャイズの「東京」を全面に押し出すことに積極的ではなかった。
今でこそ地域密着の営業は当たり前の話だが、つい5〜6年前ですら、プロ野球では地元と一体感を持った経営を本当に実行する球団は少なかった。ヤクルトは地元密着に消極的な典型的球団だった。ヤクルト本社が「東京」のイメージを強くすることに消極的だったからだ。いくつか理由が考えられる。

 一つ目は、ヤクルト本社の営業体制。ヤクルト本社は「本社」と言う如く、全国に生産拠点と流通網を有し、東京の本社を頂点に持株会社的経営を行っている為に、地方の工場や営業所に対する配慮が行き届いている。現に、オフ・シーズンに地方で「野球教室」を開く回数はヤクルトが一番多い。地方への気配りが「東京」フランチャイズ標榜を躊躇させていた。

 二つ目は、ヤクルトレディ。商品販売に寄与しているのはヤクルトレディだが、彼女らは最も数の多い巨人ファンにも呑んでもらう必要がある。強くて人気のある時の巨人ファンには逆らえない。彼女らの為にも、「東京」をユニフォームに付けて巨人との対立姿勢を打ち出すには抵抗があった。

 「東京ヤクルトスワローズ」の名称変更は、ヤクルト本社の基本方針を覆すほど、ヤクルトの経営体質が脆弱になっていることを示唆している。経営体質改善が急務の課題に違いない。地域密着の経営はその一環と思われる。大いに歓迎すべきだ。ヤクルトのみならず、他球団も一段と地域密着型経営を押し進めるだろう。この流れは止められない。

 だが、プロ野球のリーグ全体を見回した時、各球団の地域密着が進めば進むほど、フランチャイズ以外の地域に対する配慮が必要となる。コミッショナーがその穴を埋める役割を担うのは必然的である。その意味で、ヤクルトの意思決定は、コミッショナーの権限強化に繋がる。即ち、全国に展開するビジネスはコミッショナーが行わない限り誰もそれを行う人がいないからだ。近い将来、コミッショナーの役割が議論の対象になるのは不可避と予想する。


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