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第22回ユニバーシアード冬季競技大会 開会式


(C)photo kishimoto

 
第22回
ユニバーシアード冬季競技大会
(2005/インスブルック)
開会式

SPORTS IMPACT
  オリジナルGALLERY
(C)photo kishimoto
vol.233-2(2005年 1月14日発行)
岡崎 満義/ジャーナリスト

出羽錦さんのこと



大島 裕史/ジャーナリスト  
   〜節目の年の日本・朝鮮半島とスポーツ界〜


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出羽錦さんのこと
岡崎 満義/ジャーナリスト)

 出羽錦さんが亡くなった。79歳。栃若時代の名脇役だった。重い腰と左半身の構えで、いわゆる負けない相撲だった。技のキレで見せるというより、どこかユーモラスな取り口にファンが多かった。マムシと呼ばれた江戸っ子横綱、栃錦のきびしさと好対照のどこかほんわか春風を思わせる、しかしやはり江戸っ子というしかない出羽錦さんだった。

 私は週刊文春編集部時代、相撲の取材というと、必ず出羽錦さんのところに顔を出した。昭和30年代後半、大半のお相撲さんはムッツリとして、何を訊いても、ハー、ウー、オーというだけで、てんで取材にならなかった。今の力士がみんな喋ることができるのとは大違いだ。そんなとき、出羽錦さんだけは、新米編集者の質問にも実にていねいに、歯切れよく、ツボを押さえて答えてくれた。
 
 力士の代表広報係、という感じで、本当にありがたかった。現役力士時代から、後年のNHKの名相撲解説者たる片鱗を見せていたのだ。そんなわけで大相撲の取材となると、何はともあれ出羽錦さんのところに駆けつけた。出羽錦さんは、また来たの?という顔で、ニヤニヤしながら、それでもていねいに取材に対応してくれた。まことにありがたい、貴重な存在だった。

 相撲の取材でいちばんむずかしかったのは、昭和39年九州場所で、チャンコ料理にフグを使い、その毒にあたって幕下クラスの力士が亡くなった事件であった。この中毒事件をみた医者には取材できた。力士代表で出羽錦さんに会いに行った。さすがにこのとき、出羽錦さんは不機嫌で、そんなことオレが話せるわけはないだろ、と、とりつくシマがなかった。

 頼みのツナは朝日山部屋である。高鉄山と若二瀬の2人を幕内力士に抱える、中堅の相撲部屋である。親方は現役時代、張り手の名人で、横綱鏡里を一発で張り倒したキャリアがあった。引退したあと大鳴戸部屋をつくり、若二瀬ともう一人、たった二人の弟子で部屋をおこした。日本一小さい相撲部屋、ということで、週刊文春で取材した。親方はそれを大変喜んでくれて、毎場所、部屋頭の若二瀬に番付をもたせて、編集部に挨拶に来てくれた。それにこたえて、編集部で大鳴戸部屋後援会をつくり、1人300円位の会費で、40人分のお金を集めて、しばらく場所ごとに渡していた。とてもタニマチとは言えないわずかなご祝儀であった。それは昭和37年頃のことだったろうか。

 そんなことで親方(大鳴戸から朝日山へ名跡変更があった)とは昵懇となっていたので、フグ中毒事件のときも、大相撲内部の声を少しでもとりたいと訪ねたのである。

 訪ねるには何か手土産がいると思い、朝日山親方に電話した。日本酒を何本か持参しましょうか、と言うと、親方は「いやいや、お酒より、インスタント・ラーメンの方がありがたいです」とのことだった。チャンコ料理は番付の上の方から食べ始める。序の口が食べる頃には、スープの中にはもはやたいして具は残っていない、そんなとき、インスタント・ラーメンをいくつか鍋に放りこめば、とにかく腹がふくれるのです、と親方は言った。日本の高度成長が始ったばかりの頃の、相撲部屋である。私は両手にインスタント・ラーメンを詰めた大袋を持てるだけ持って、朝日山部屋の宿舎に出向いた。そして、話を聞きながら、親方、高鉄山、若二瀬と並んでおいしいチャンコ鍋をご馳走になったものである。


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