北米プロアイスホッケーリーグ(NHL)で、昨年9月16日から約1年間に及んだオーナー側のロックアウトが解かれ、新シーズンは、あの熱闘が見られることになった(10月5日開幕)。 プロ・スポーツのいわゆるストライキは、NHLもかつて経験があり、ベースボール(MLB)も、そのために人気回復が遅れ、ピンチをつづけた。 いつも火ダネになるのは、選手たちの参稼報酬の高額さである。 選手側は、巨額のテレビ放映権が動き、入場者数も好調として、報酬へはね返すことを求めるが、そうはいっても“限界”がある。 NHLのこれまでの労使協定は、昨年9月に切れることが分かっており、かなり早い時点から、両者の強気で新協定を結ぶのに不安の声が聞えていた。はたして、1シーズン、パックの音が聞えぬ不幸な結果となった。 いかな名手、スーパースターといえども、活動の場がなくては話にならない。その主張に肩を持つフアンも、しだいに支援の声を遠くする。 妥協された今回の新協定は、どうみてもオーナー側の“勝ち”だ。 リーグ全体の収入の75パーセントが選手の報酬(年俸)に費され、チームの経営は赤信号が灯ったまま、とするオーナーたちは、厳しいサラリーキャップ制(年俸総額を制限する方法)を打ち出し、それを納得させた。 NHLの発表では、選手全体でリーグ総収入の54パーセント以下、1選手の年俸がチームの上限の20パーセントを超えてはならないなどを決めている。 さらに厳しいのは、選手1人々々が、現在の契約の24パーセントが減額されることだ。それでも選手たちの90パーセントが、新協定に賛成した、と伝えられるのは、やはり“働きどころ”を失っては何にもならないからである。 6ディビジョン30チームもあれば、経営の強弱がはっきりしてくる。キャップをはめられて高い収入へつなげるには、リーグ全体をどう盛り上げ、高い内容の試合を展開するかにかかる。来年2月のトリノ冬季オリンピック参加のため、シーズンを中断させる手が、状況を呼び戻すことになるかどうかも興味深い。 派手な面ばかり伝えられるプロ・スポーツだが、裏面の“マネーウォーズ”は、日本のプロ・ベースボール界などに、ある面でテキストとなりそうだ―。 |