介護保険法の改正案が10日の衆院本会議で可決された。介護保険の利用者と給付額を抑制することを狙いとした改正だが、その内容を見ると、スポーツ界にも関係する事柄のように思えてくる。
改正の最大の柱となったのが「新予防給付」という制度の導入。軽度の要介護認定者の症状が悪化するのを筋力トレーニングなどによって予防し、それに対して給付を行う対応策だ。
筋トレの効果を調べるために厚生労働省が48市町村を通じて行ったモデル事業では、対象者の44%の要介護度が改善され、逆に16%が悪化したという結果が報告されている。
調査結果の評価は難しいが、筋トレを利用した「パワーリハビリ」が注目されていることは確かだ。ただ、この方法が要介護認定者を含む高齢者に定着するかどうか。筋トレには無縁な層ともいえるだけに、トレーニングを始めても継続は容易ではないだろう。本人にもそれなりの知識がないと危険を伴う。
私事になるが、この春からスポーツジムに通い始めた。簡単な体力測定の後、いくつかの筋トレマシンの使い方を説明されただけで、その他のマシンは、貼られている写真の説明を見ながらの自己流トレーニングだ。筋トレに汗を流しながらも、無理をしてけがをしないかと心配にもなる。自分に見合った“適量”が素人にはわかりにくい。
周囲を見渡すと、特に女性は筋トレを避けて自転車やジョギング、ウォーキングなどの有酸素系マシンに向かいがちだ。ダイエットにも脂肪燃焼率を高める上で筋トレは有効なのだが、「筋肉隆々になるつもりはない」とばかりに敬遠している様子だ。
専門的に鍛えているプロアスリートでも、筋トレで失敗するケースは多い。以前、プロ野球選手にわき腹痛が多いのを疑問に思い、当時解説者だった牛島和彦さん(現横浜ベイスターズ監督)に理由を尋ねたことがある。牛島さんは「今は筋トレばやりだけど、みんなアウターマッスル(外側の筋肉)ばかり鍛えているからインナーマッスルとのバランスが崩れる。だから、ちょっとしたひねりでわき腹を痛めるんでしょう」と教えてくれた。
スポーツ選手だけでなく、高齢者や介護を必要とする人にも筋トレの知識と理解が求められる時代になるだろう。そのためのノウハウは、まだ医療関係者以外には広まっていない。スポーツ界の智恵が加われば、社会にも大きな役割が果たせる。関係者にぜひとも考えてほしいテーマだ。 |