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vol.257-2(2005年 7月 1日発行)
滝口 隆司/毎日新聞運動部

「運動しましょう」と言うだけでは


葉山 洋/マーケティング・コンサルタント
 〜プロ野球有識者会議〜

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「運動しましょう」と言うだけでは
滝口 隆司/毎日新聞運動部)

 小学校3年生になる娘が学校から小冊子を持って帰ってきた。表紙に「元気アップハンドブック 小学校中学年用」とある。そして、裏には「遊びは子どもの大切な仕事です」。文部科学省と日本体育協会が進める「子どもの体力向上キャンペーン」で全国の児童に配布されているものなのだ。

 「自分の体について考えてみよう!」「みんなの体はどんな時期かな?」「よく食べ、よく動き、よくねむろう!」などの項目があり、「生活の様子をチェックしてみよう!」や「自分の体力・運動能力を知ろう!」では、就寝時間やテレビを見る時間、学年ごとの体力テストの結果を書き込めるようになっている。

 あわせて配られた保護者向けのパンフレットには子どもの体力の現状がコンパクトに記されている。親の世代にあたる30年前に行われた「体力・運動能力調査」のテスト項目に比べ、大半で現在の子どもたちは下回っているという。たとえば、昭和48年度と平成15年度の11歳(男子)の50メートル走の結果は、親の世代は平均8・80秒、今の子どもは8・91秒。ソフトボール投げは親の世代が34メートル、今の子どもは30・42メートル。などなどの調査結果だ。

 そして、この原因を「外遊びやスポーツの重要性を学力の状況と比べ、軽視する傾向に進んだことにあると考えられる」と分析し、@学習外の学習活動や室内遊び時間の増加による、外遊びやスポーツ時間の減少A空き地や生活道路といった子ども達の手軽な遊び場の減少B少子化や学校外の学習活動などによる仲間の減少――の3点を挙げている。

 もちろん、その通りだろう。塾通いで遊ぶ時間がとれず、空き地も少なくなった。子どもの数も減った。だから、子どもは外へ出て運動をしましょう。というわけなのだが、そんなことは誰もが分かっている。

 学校ではこの小冊子が配られただけだという。家に持ち帰って親子で考えてください、ということだろう。日体協が運営するキャンペーンのホームページにアクセスすると、そこでは総合型地域スポーツクラブやスポーツ少年団が検索できるようになっているが、ここまでたどり着く親がどれだけいるだろうか。ただ、この情報も一部に過ぎない。

 子どもにスポーツをさせたい、と考える親は多い。ところが、実際にはどこにどんなチームがあるのか、だれに連絡すればいいのかがよく分からない。かつて子どもに柔道をさせたい、と思ったことがあったが、電話帳で探したり、市役所に聞いたりして大変苦労をしたことがある。「習い事」として通うスイミングスクールの情報はいくらでも手に入る。しかし、その他のスポーツは親同士の口コミか、街角に張られたポスター程度でしか知るすべがない。

 子どもの体力向上キャンペーン。おおいに結構だ。しかし、「運動をしましょう」と呼びかけるだけなら、それは税金の無駄遣いじゃないのか?と嫌味も言いたくなる。


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