プロ野球、千葉ロッテ・マリーンズが31年ぶりにパ・リーグを制した。あえて「千葉ロッテ」と書いてみたくなったのは、ロッテという企業色よりも、千葉という地域色が前面に出てきたように思えてならないからだ。 房総半島を除けば、千葉県は東京で働く人のベッドタウンの色合いが濃い。私もその一人なのだが、プレーオフの期間中、レプリカのユニホームを着て街の中を歩く人やテレビ中継が行われないことに不満を漏らす子どもたち、会社を休んで福岡まで観戦に行くような知り合いを見ていると、「これは間違いなく地域の球団になってきた」という気がしてくる。千葉への本拠地移転から14年、やっとその成果が実ってきたに違いない。 マリンスタジアムの外野席を埋める観客の一体感は他球団にないほど強く、西武ライオンズとのプレーオフ第1ステージでも2試合で5万7975人の観客が集まった。地元意識が決して高くはない千葉県民に、プロ野球は「千葉」というアイデンティティを植え付けたのかも知れない。それはJリーグ・浦和レッズと地元との関係にも似ている。 TBSの筆頭株主となった楽天の三木谷浩史社長が、複数の政財界関係者に横浜ベイスターズの売却計画を漏らしていたことが問題になっている。水面下とはいえ、親会社であるTBSとの協議を前に、こうした問題に触れるのは当然ながら球団への非礼にあたる。 しかし、横浜の身売り騒動をめぐって横浜市民は目立った反応を見せてはいない。横浜からプロ野球がなくなるのなら話は別だが、親会社が変わること自体、大きな問題ではないからだろう。大魔神、佐々木主浩とマシンガン打線を擁して日本一になった98年、横浜での優勝パレードは圧巻だった。沿道を埋め尽くす何万人もの熱気に、「大洋」ではなく「横浜」を名乗った地元球団への愛着が感じられたものだ。 地域性を重視するサッカーに対し、プロ野球は企業の宣伝媒体などと揶揄されてきた。が、最近はそう言い切れるものでもない。前述の2球団以外でも、ホークスは福岡に、ファイターズは北海道に根を下ろして地元からの支持を受け、新球団の楽天も仙台という東北の地に新たな娯楽を提供した。言うに及ばず、タイガースは関西の象徴的存在である。一方、3年前に「巨人は全国区だ」といって「東京読売巨人軍」から「東京」を外したジャイアンツの凋落は激しい。 16年前、大阪に住んでいた私は南海ホークスが福岡へ売られていくのを身近で経験した。大阪の中心地・難波にあった球場を、大阪の人たちは「大阪球場」ではなく、地元の親しみを込めて「難波球場」と呼んでいた。その難波球場も今は取り壊され、跡地には巨大なビルが建っている。野村克也をはじめとする個性に満ちた南海ホークスの面々。汚い野次が飛び交う熱きスタンド。子どもの頃、一塁側内野席から見た光景を思い浮かべると「あれこそ、大阪の球団だったのだ」と感傷的にもなる。河内の近鉄と神戸のオリックスが一緒になったチームを、大阪の球団とはやはり呼べないものだ。 |