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vol.304-1(2006年 6月 7日発行)
松原 明 /東京中日スポーツ報道部

「アジア代表の危機」


 いよいよ、ドイツ・ワールドカップ大会が始まる。

 2010年は南アフリカ、2014年は南米開催と決まっているので、欧州で開催されるのはこれで、しばらく見納めになる。

 今回、アジア代表は日本、イラン、韓国、サウジアラビアの4か国が出場するが、心配なのは、アジアの成績だ。1998年から拡張政策で、本大会参加国は32に増え、アジアも4わくを確保した。かつては、1しかなかったことを思えば、飛躍的な増加である。

 だが、欧州開催に限って、アジア代表の戦績は惨たんたるもの。
決勝トーナメントへ進んだのは、1966年イタリアを1−0で破る番狂わせを演じ、チリとも引き分けた北朝鮮だけ。欧州の3大会に出場している韓国でさえ、0勝7敗1分け。1998年フランス大会で、1次リーグの最後にベルギーに1−1の引き分けをしたに過ぎない。

 1次リーグで1勝を挙げたのは、1998年、アメリカに2−1で競り勝ったイランの貴重な1勝しかない。いかに、アジアが欧州大会で勝つのが至難のワザなのかが良く分かる。日本も1998年大会は3敗。「ジャマイカなら勝てる」と、だれもが思った最終試合も終了直前に1点を返すのがやっと。3戦全敗だった。

 欧州開催の大会で他の大陸が優勝したのは、第6回(スェーデン大会)でブラジルが成し遂げた1回しかない。あとは、ことごとく欧州代表が王座に着いている。

 アジアから欧州への挑戦は、極めて厳しい。絶対に楽観論は禁物である。
私が心配なのは、もし、今回も、アジア代表4か国がすべて1次リーグで敗退した場合、2010年のアフリカ大会は、現在の4わくを減らされるのではないか、という点だ。

 アフリカは5か国のわくを持っているが、地元開催で、さらに1わく増加を要求するのではあるまいか。狙われるのは、アジア。日本、韓国、サウジアラビア、イランが、せめて1勝ずつ挙げて、善戦をアピールしない限り、前途は多難。

 歴史を書き換えるのは大変なのを、良く知って欲しい、と思う。

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