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vol.305-1(2006年 6月14日発行)
松原 明 /東京中日スポーツ報道部

「日本代表の危機」

 ワールドカップ第1戦、日本対オーストラリアの無惨な逆転負けに、言葉もないが、これで、日本代表の危機は明確になった。

 現在の代表選手は、ユース時代の育成が実り、約10年余の長期国際経験を積ませて送り出したベストメンバー。ジーコ監督以下のスタッフに、過去、例を見ないほどの経費を掛け、4年間もの歳月を経て完成したものが、あのような、日頃の力も出せないまま崩れるとは、驚きである。

 深刻な問題は、後続の育成が全くない、ことだ。現在の代表は、4年後の南アフリカ大会には、30歳を超えるのが11人。ちょうど30歳が10人。もし、新戦力の台頭がないと、完全な、老化集団になってしまう。

 アテネ世代の代表は、駒野、茂庭(ともにDF、24歳)。この2人しか入っていない。世界を見渡しても、30歳以上の集団はどこの国にもない。

 ジーコはFW・平山、MF・阿部、長谷部らの若手にチャンスを与えなかった。田嶋技術委員長は「世代交代の重要性は十分認識している。今後は大変です」と言っても、ジーコに若手起用の進言はできないまま、ドイツ大会を迎えた。

 4年に1回のワールドカップを各国とも重視し、必ず若手を加えて、ベンチでも、先発でも経験を積ませ、次の大会へ、つなげようとしている。

 韓国は24歳以下のメンバーを、実に9人も加え、新旧ミックスで、第1戦に快勝した。彼らは、さらに円熟し、2010年には完全に、日本をしのぐに違いない。

 中国は北京五輪目指して若手の育成を重視し、北朝鮮も、ワールド・ユース大会で世界を驚かせる活躍をした。ともに、今後は恐るべき存在になる。その上、オーストラリアがアジアに加入した今、2010年は、新鋭の発掘がない限り、アジア予選を勝ち抜くことさえ、至難のワザになるのではなかろうか。

 いつまでも、今の黄金の世代が頑張れるわけではない。日本は重大な岐路にさしかかっている。

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