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嘉納治五郎杯国際柔道大会 2006 男子/-100Kg決勝 穴井隆将 対 石井慧


(C)photo kishimoto


嘉納治五郎杯
国際柔道大会 2006
男子/-100Kg決勝
穴井隆将 対 石井慧

SPORTS IMPACT
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(C)photo kishimoto
vol.285-1(2006年 1月18日発行)
岡崎 満義/ジャーナリスト

「ミステリアスな選手でありたい」

杉山 茂/スポーツプロデューサー
  〜キックオフに優る開会式なし〜
松原 明/東京中日スポーツ報道部
  〜「殿堂入りの明暗」〜
岡 邦行/ルポライター
  〜“スポーツを楽しむ”という言葉にかくされた意味〜
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「ミステリアスな選手でありたい」
岡崎 満義/ジャーナリスト)

 先週、1月8日に開かれたミズノ100周年記念スポーツ・シンポジウム「Sports for All Children」について、少し紹介した。

 今週はそのつづき。

 作家の村上龍さんとイチロー選手の対談が面白かった。「テレビで見たが、当時レッドソックスのペドロ・マルチネス投手にサインをもらってましたよね」と村上さんが言うと「大リーグの選手にはあこがれをもっていたので、マルチネス投手はもちろん、チャンスがあれば誰でもサインをもらおうと思っていた。マリナーズの長谷川投手のサインももらったぐらいだから。それなのに、私よりあとからメジャーリーグに入ってきた日本人選手は、誰1人、私のサインがほしい、と言ってくれない」と、大いに笑わせた。

 「どうしたらイチロー選手みたいになれるのか、と訊かれることが多い。でも、突然、今のイチローになったわけじゃない。毎日、小さな積み重ねの上に今がある。3歳から野球を始めて、29年積み重ねてきて、今のかたちがある。あえていえば、好きなことを見つけることが大切だ、と思う」。村上さんは「得意なことより、好きなことを見つけることだよね」と念を押した。

 この話を聞きながら、F1レーサ中嶋悟さんをインタビューしたときのことを思い出した。「よく、時速300キロのマシンに乗れるものですね」と言うと、中嶋さんは「いきなり300キロのスピードを出したわけじゃない。50キロ、100キロ、150キロ、200キロ・・・と段々にスピードに慣れ、その経験の上に今の300キロがあるのだ」と、こたえた。  

 小さなことを積み重ねていく、まさに、継続的は力なり、である。

 村上龍さんは近年、「13歳のハローワーク」で大ベストセラーとなった。それを書くヒントになったのが、イチロー選手だという。「野球は何よりも個人プレーの集まりだ。その意味では孤独であり、自分しか頼れるものはない」というイチロー選手の自立的な考え方に共鳴して、中学生向けの本を書くことができた、と言う。

 「うち込めることのある人とない人では、大きな差が出る。熱中できることがあれば、社会人としてやっていける。カベが越えられるのは、好きなことをやっているから。好きなことは飽きない」という点で、2人は同じだった。

 「マリナーズに入ったとき、大リーガーたちのすごいところばかり見えた。5年たって、すごくないところも見えてきた。それは淋しいことだ。いつか、大リーグのマウンドに立って、ピッチャーをやってみたい。いつかやれる日があるかもしれない」と言ったのには驚いた。日本のオールスター戦で、仰木監督はイチロー投手をマウンドに送ったことがある。大リーグでそれができれば、新しいレーザー・ビームが見られることになる。

 入団の年、走者1塁で右前安打、イチロー選手は矢のような球をサードに遠投して、走者をタッチアウト。熱狂したアナウンサーが「イチローのレーザー・ビーム!」と叫んで、以後、強肩イチロー選手の代名詞となった。

 「そのとき、うれしいのを押し殺して、無表情で、淡々ともとの守備位置に帰る自分がうれしかった」と言う。「ヒットを打ってスコアボードにHのランプがつくと、飛びあがるほどうれしい。いい当たりでも、アウトになると、はらわたが煮えくりかえるほど悔しい。いずれの場合も、表情に感情は出さない。敵に気持ちを悟られたくないから。とにかく、何をやるかわからない選手、ミステリアスな選手でありたい」と、イチロー選手は言った。その言やよし。

 今年もイチロー選手で大いに楽しめそうだ。


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