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vol.293-2(2006年 3月17日発行)
大島 裕史/ジャーナリスト

韓国野球快進撃の背景



滝口 隆司/毎日新聞運動部記者
   〜テコンドーよ、またか〜

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韓国野球快進撃の背景
大島 裕史/ジャーナリスト)

 WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で韓国の勢いが止まらない。アジアラウンドの日本戦勝利に続き、アメリカまで破り、日本との再戦まで物にした。韓国人自身が信じられないほどの快進撃である。

 韓国野球にとって日本やアメリカは、「宿敵」というよりも「師匠」のような存在である。プロ野球の歴史もわずか24年。歴史の違いは歴然としている。しかし韓国は、国家代表チームとしての歴史だけは、日本やアメリカより長い。

 韓国は、1954年に始まるアジア野球選手権に出場して以降、代表チームとしての意識を持ち続けてきた。それに対して日本は、長年国際試合への関心は低く、オリンピック種目になる前は、アマチュアとしても、代表チームの意識は乏しかった。

 プロが参加できるようになった98年のアジア大会から、韓国はいわゆる「ドリームチーム」を結成していたのに対し、日本が本当の意味でのセレクトチームを結成したのは、03年のアテネ五輪の予選からである。アメリカは今回が初めてと言っていい。

 その分、韓国には国際試合のノウ・ハウがある。韓国では、国内の試合では活躍しても国際試合に弱い、いわゆる「国内用」と、国内では目立たないが、国際試合では有効な「国際用」(例えばショートの朴鎮萬)とが、ある程度分けられている。これもノウ・ハウの蓄積の一つである。

 また、試合運びが手馴れており、大会全体を通じての戦略もしっかりしている。

 巨人の低迷をみても分かるように、野球は選手を揃えれば勝てるというものではない。厳しい試合になればなるほど、チーム力が要求される。

 ただ、今回の韓国の躍進は、韓国で野球が盛況だからなし得たことではない。反対に、強い危機意識こそが、その原動力になっている。昨年の韓国プロ野球の観客動員数は、シーズン全体で約340万人(1試合平均約6700人)しかない。これでも、前年比45%増である。

 しかし、今年はサッカーのW杯があり、状況はかなり厳しい。もともと韓国では、国内の試合で勝っても、あまり評価されない。海外で勝ってこそ注目されるのである。それだけ必死であり、WBCに向け、球界を挙げて取り組んでいる。

 さらに選手には、兵役の問題も絡んでくる。本来、兵役免除は、オリンピックのメダリストとアジア大会の優勝者のみであるが、2002年のW杯では、例外的に認められた。今回の健闘を受けて、再び例外的に兵役免除を認める動きが、本格化している。

 今回の選手の約3分の2は、アジア大会やオリンピックのメダルにより、既に兵役が免除になっている。残る3分の1の若手のために、先輩が道をつける。これが野球の韓国代表チームの新しい伝統になっている。

 日本は、メキシコの奮戦のお陰で、またしても韓国と対戦することになった。アジア野球の盟主として、3度続けて負けるわけにはいかない。

 ただその一方で、準決勝以降の結果に関係なく、今後は、プロ・アマの垣根を越えて、「日本代表」をどう強化していくか、真剣に議論するべきである。それは日本に限ったことではない。国際大会を円滑に運営するため、サッカーのFIFAのように、プロを含め、球界全体を統括する国際機構が不可欠である。アメリカが簡単に応じるとは思えないが、日本が先頭に立つくらいの気構えがほしい。


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