「負けてはいけない試合」というのがある。 ラグビー日本選手権2回戦のトヨタ自動車がそれではなかったか(2月12日・東京秩父宮)。 相手の早稲田大学が、いかに実力を備えた“人気チーム”としても、トップリーグ勢が勝ちを逃しては、最強ゾーンへの視線は厳しいものになる。 03年シーズンに発足したトップリーグは苦しい状況がつづく。 とりわけ、戦力の高さに比べて、スタンドの賑わいが物足りない課題は、今シーズンも“好転”しなかった。 ラグビーは、学生勢が“歴史の力”をつなぐ数少ないスポーツの1つで、早稲田大学はつねにその中心的存在だ。 環境を整えてのチーム一丸の「上位志向」は、多くのフアンを魅きつけ、今シーズンは監督自ら「史上最強ではないか」と見るほど充実し、この日は善戦を期待するフアンの足を誘った。 トヨタ自動車が、その雰囲気にのまれたとは考えにくいが、つねに先行を許し、それでも21-28から1PGで“逆王手”の戦況とし、相手への重圧としたのは、トップチームらしい巧みさだった。 ロスタイム2分のアナウンスが、場内を重苦しくさせたのは、トヨタ自動車に勝機が訪れるのを“予感”したもののように思えた。選手たちの動きからも、その自信をうかがうことができた。 総て試合前の予想どおりに展開してしまっては、スポーツの醍醐味は失われてしまう。 本来は総てイーブン(互角)の立ち場で開始されるのだが、一方では挑戦者(チーム)のカラーが濃くなる。 挑む側が勝利を得た時、楽しさは2倍にも3倍にもふくれる。 早稲田大学が、そのドラマを演じてみせたのだから、さらにボルテージが上がったのもムリはないが、やはりここは「早稲田勝つ」より「トヨタ敗れる」ことのほうに、重点を置いておきたい。 トップリーグ勢は、日本ラグビーの繁栄のためにも負けてはいけない。まして“外の力”にひざまづいてしまっては、行く道は細くなるばかりだろう―。 |