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vol.291-2(2006年 3月 3日発行)
滝口 隆司/毎日新聞運動部記者

ナショナルチーム中心の強化でいいのか


市川 一夫/スポーツライター
  〜アスリートのセカンド・キャリア支援がビジネス化する事情〜
   −競技団体などが取り組み進める−

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ナショナルチーム中心の強化でいいのか
滝口 隆司/毎日新聞運動部記者)

 トリノ五輪に出場した日本選手団の本隊が帰国した。東京都内のホテルであった記者会見はもちろんフィギュアの荒川静香が主役となったのだが、選手団の幹部役員が今回の成績の原因をどう捉え、今後にどう生かそうとしているのか。その話は是非とも聞いてみたいところだった。

 「ウィンタースポーツ先進国の環境は素晴らしい。日本も冬季競技のナショナルトレーニングセンターの実現に具体的に取り組むべき時期に来ているのかも知れない」
 
そう語ったのは遅塚研一・選手団長。東京・西が丘に建設されるナショナルトレセンは08年北京五輪を前に完成する予定だが、こちらは夏季競技中心。そこで冬季競技でもじっくり練習に取り組める環境を、ということだ。財政難の国家が「さあ次は冬のスポーツも」と気前よく財布のひもを緩めてくれるかどうか。

 この話を亀岡寛治・総監督が補足した。「長野五輪で培ったソフトとハードがある。例えば、スケートはエムウェーブをもっと利用できるようにしなければならない。この他にも帯広や野辺山にある施設をもう一度見直していく必要がある。次のバンクーバー五輪に結びつく根本的な強化策の見直しを進めたい」。既存施設も含め、年間を通じて国内で利用できる施設の必要性を、競技団体関係者は痛感している様子だ。

 記者会見では出なかった話だが、今回、気になっている議論がある。冬季競技の再建を目指すには「ナショナルチーム中心の強化を進めるべきだ」という声だ。

 企業スポーツの崩壊により、所属チームでの競技環境はやせ細っている。ならば、日本代表に選ばれた選手を集中強化し、そこにカネやヒトをつぎ込もう、という発想である。ナショナルトレセンの整備も、その延長線上にある考え方といえるだろう。

 いろんなチームからの寄せ集めよりも、「日本代表」という1つのチームでふだんから徹底的に鍛えた方がいい、という理論は分かりやすい。しかし、将来的に見た時、このシステムは長続きするのだろうか、という疑問がある。幅広い競技環境を整備せず、トップだけを養成する手法で、次世代のアスリートが育ってくるのか、という心配だ。

 アルペンスキーの男子回転で4位に入賞した皆川賢太郎の所属は「アルビレックス新潟」。アルビレックスといえば、「総合型」を目指すクラブとしてサッカーとバスケットが有名だが、スキー・スノーボードのチームも04年9月に発足している。今回の五輪には皆川と吉岡大輔、広井法代のアルペン3選手が出場。これ以外にもスノーボードのハーフパイプやスノーボードクロスの選手が所属し、スポンサーや後援会の支援を受けながら活動している。

 選手たちは競技の傍ら、スキーやスノーボード教室のインストラクターをしたり、スキー場のコースプロデュースにも関わっている。そうして競技環境のすそ野を広げようとしているのは興味深い。まだ始まって2シーズン目。注目し続けたい動きである。


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