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vol.295-2(2006年 3月31日発行)
滝口 隆司/毎日新聞運動部記者

新広島球場の青写真



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新広島球場の青写真
滝口 隆司/毎日新聞運動部記者)

 老朽化のために移転・新築が計画されている広島市民球場の設計で、竹中工務店を筆頭とする共同企業体の計画案が最優秀賞に選ばれた。その目玉は、一塁側の内野席から外野席を覆う巨大アーチ(高さ70メートル、間口190メートル)である。

 アーチには、広島市内や瀬戸内海を一望できる展望台が併設される。それはそれでいい。ところが、このアーチにはもう一つの狙いがある。将来的に屋根を取り付けることを想定しているというのだ。

 市の選考委員会では、全面的にこの計画案を絶賛しているわけではなく、いくつかの条件を付けている。その一つが事業費だ。市の上限90億円に対し、企業体の当初案は129億円。予算オーバー分の39億円を企業体がネーミングライツの販売や広告収入で調達する予定だったが、選考委の指摘を受け、最終案ではこれを10億円圧縮した。しかし、それでも選考委は不十分との見解だ。特に屋根の設置には議論があり、巨額の資金を費やす必要があるのか、と疑問の声も上がっているという。

 市の基本方針は以下の通りだ。
@建設場所は、JR広島駅東側の貨物ヤード跡地とするA球場形態は、観客定員約3万人の天然芝のオープン球場とするB完成時期は、2009年のプロ野球シーズン開幕までとするC事業主体は、広島市とするD新球場の事業予定者の選考は、民間のアイデアやノウハウの活用、事業期間、コスト縮減等を考慮し、コンペ方式により行うE現球場跡地の利用について、年間150万人以上を集客目標とした、新たなにぎわいとなる都市機能の導入強化を図る―。

 つまり、基本方針では「天然芝のオープン球場」を謳っている。屋根の設置がどの程度になるのかは現段階では分からない。客席の一部なのか大部分なのか、開閉式のドーム型なのか。いずれにせよ、屋根設置のアイデアが持ち上がる背景には、天候による経営リスクを回避しようとする球団側の事情よりもむしろ、大手ゼネコンの利益が関係しているようにも見える。今回の案は札幌ドームの設計士が担当しており、建設は竹中工務店、戸田建設、浅沼建設が担うという。

 1957年に建設され、以来半世紀を迎えようとしている現在の広島市民球場は時代の役割を終えようとしているのか。他球場に比べれば、古さに加え、狭さも目立つ。しかし、各地のドーム球場にはない「季節感」があり、地元の人には愛着もあるだろう。原爆ドームにも近く、現在の球場は広島の象徴的な存在でもある。

 阪神甲子園球場も来年10月から改修工事に入り、2010年3月に「ニュー甲子園」が完成する。こちらは銀傘を左右に約40メートル延ばすという計画だ。客席の間隔を広げたり、バルコニー付きのスイート席を設けたりもするが、あくまで甲子園の原型はそのままだ。高校野球と阪神タイガースという伝統と文化がその根底にあることは言うまでもないだろう。広島にもカープが市民球団として定着してきた歴史がある。

 今、甲子園でセンバツを取材している。春の陽気にまどろむ時もあれば、降りしきる雨に体の芯が凍りそうな時もある。きのうの第4試合では小雪がちらついた。夏場は風で砂塵がネット裏の記者席にまで舞い込んでくる。毎年、いつも変わらない光景がそこにはある。


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