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第82回日本選手権水泳競技大会 公式練習 女子 伊藤華英
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vol.298-2(2006年 4月21日発行)
滝口 隆司
毎日新聞大阪本社運動部記者

ラグビー・トップリーグのアジア選手枠



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ラグビー・トップリーグのアジア選手枠
滝口 隆司/毎日新聞大阪本社運動部記者)

 ラグビーのトップリーグで、来年度からアジア選手枠が設けられることになった。現在、試合に同時出場できる外国人選手は2人まで。この規定とは別に、アジア協会所属の25カ国・地域の国籍を持つ選手を対象とした1〜2人の枠を作るという。「アジアラグビーのリーダー」を自認する日本ラグビー協会では、この選手枠創設がアジアのレベルアップにつながるという考えだ。

 そこでまず考えられるのは、韓国や台湾の選手増加だろう。日本の大学や高校でプレーしている韓国、台湾の選手にもトップリーグへ進む機会が拡大するに違いない。だが、アジア選手の日本流入は、この範囲でとどまるだろうか。

 先日、ワールドカップ・アジア予選で来日したアラビアンガルフ(湾岸諸国10カ国の連合チーム)のメンバーを見て驚いたことがある。先発15人中、湾岸諸国の国籍を持つ者は1人としていない。英国、南アフリカ、ニュージーランド、豪州といったラグビー強国の出身者が並んでいた。

 こうした国の選手がなぜ湾岸諸国でプレーしているのかを考えるのは興味深い。湾岸諸国に住んでいる英国人や南ア人のラグビー経験者の寄せ集めで代表チームを結成したのか、それとも母国では代表になれない選手が新たなプレーの場を求めて湾岸諸国に移ったのか。おそらく前者の可能性が高いだろう。

 しかし、日本にアジア選手枠が出来れば、「日本に行けば、ラグビーでメシが食える」とばかりに湾岸諸国などでプレーする欧州や南半球の選手がその国の国籍を取得し、日本に流れてくることも予想される。五輪を見ても分かるように、国際的なスポーツ選手にとって国籍を変更することへの抵抗は少なくなっている。

 サッカー、欧州各国リーグの世界を見ればいい。EU(欧州連合)統合に伴って各国リーグは多国籍化した。イタリアもイングランドもスペインもドイツも、すべてEU内の外国人選手枠を撤廃し、移籍を自由化した。

 サッカーW杯の公式ガイドブックが発売された。その中で各国選手の所属クラブを見れば、強豪国の選手が軒並み欧州リーグでプレーしていることが明確に分かる。正式なメンバー発表は各国とも少し先になるが、ガイドブックに紹介されている各国20人のメンバーを見ると、ブラジルは全員が欧州リーグ所属。アルゼンチンも18人が欧州に活動拠点を置く。アフリカから初出場のコートジボワールにも自国リーグ所属は1人もいない。

 日本ラグビーに話を戻そう。トップリーグの各チームはアジア選手を別枠にすることで、さらに欧州や南半球の選手を多く獲得できる。そう考えれば、将来的に多国籍化が進んでいくかも知れない。

 それが日本のレベルアップにつながるかどうかは議論の余地があるところだ。欧州のサッカー界でも「自国の選手の出場機会が奪われる」という反対意見は根強かった。その一方で、自国の選手が外国人選手と切磋琢磨することでレベルが上がるという主張もある。ここ10年、続いてきた論争だが、結論は出ていないといっていい。

 今、ラグビー日本代表の強化は試行錯誤を続けている。その基盤となるトップリーグの変革が何をもたらすのかは注目に値する。


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