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vol.326-2(2006年11月10日発行)
滝口 隆司 /毎日新聞大阪本社運動部記者
このままでは冬季国体の火が消える

 2008年2月に行われる第63回冬季国体のスキー競技会の開催地が決まらず、全日本スキー連盟(SAJ)が自ら運営費の一部を負担した上で、SAJ主体で開催する案を示しているという。

 本来、国体は文部科学省、日本体育協会、開催都道府県の3者主催で行われることになっていて、競技団体が運営費を負担することはない。だが、SAJは「スキー国体の歴史に穴を開けるわけにはいかない」と費用の負担まで買って出て開催に乗り出すという話だ。開会式を簡素化して既存施設を使い、補助金と企業協賛金で約7000万円を集めて自治体の財源に頼らずに開催する方針らしい。

 このニュースが伝わってきた時、私は「またか」という気がした。05年2月の冬季国体でも「開催地が決まらない」という今回と同様のトラブルが起きていた。その時はスケートとアイスホッケーの開催地選定が難航。従来は同一の開催地で実施していた両競技を、スケートは山梨県、アイスホッケーは東京都と、初めて分離開催することになった。

 今回もスケート競技会を長野県で開催するものの、アイスホッケー競技会の会場はまだ決まっていない。開催まであと1年3カ月。こういう状態が毎年のように起きることは非常に問題だろう。

 夏と秋に比べ、冬の国体は日本全国どこでも開けるものではない。最近の例をみても、冬、夏、秋のすべてを開催した「完全国体」は1995年の福島県以降ない。冬季大会は常に北海道、東北、甲信越などで毎年やりくりしているのが現状だ。

 3年前に日体協が策定した「新しい国民体育大会を求めて〜国体改革2003〜」を読み返しても、冬季国体に対する危機感が希薄なように思われる。

 「冬季大会については、冬季スポーツ特有の日程・会場(施設)など、開催地選定の条件が整う適地が限定される現状を考慮」などとし、@競技別、種目別の分散開催A開催地拠点地域での持ち回り開催――について検討することが書かれている。だが、05年の分離開催の経緯や今回のSAJの動きを見ていても、これら冬季大会の計画が周到に進められていたものでないことは明らかだ。

 財政難で開催を希望する都道府県が減ってきたことから、大会の簡素化・効率化を求めて「国体改革」は実施された。しかし、その改革の矛先は、肥大化した夏季・秋季大会に向けられていた。今年の兵庫国体では簡素化のための夏秋の一本化が図られ、大会もまずまずの盛り上がりを見せていた。

 さて、次は冬季国体をどう変えるか。競技団体が運営費を負担する方式では長続きしないに違いない。冬季国体が冬季スポーツの発展にどう寄与してきたのか、開催の意義、自治体の負担などを早急に洗い直して手を打たないと、今後、自治体に開催要請することはますます難しくなるだろう。

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