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vol.381-1(2007年12月10日発行)
岡崎 満義 /ジャーナリスト
大麻吸引事件を考える

 新興勢力ながら、ラグビー強豪校として定着しはじめたかに見えた関東学院大が、大揺れに揺れている。レギュラー選手をふくむ12人のラグビー部員が、大麻吸引で神奈川県警から任意で事情聴取を受けたのだ。(2人は大麻栽培で取締法違反で起訴されている)。そして名将・春口広監督の辞任。

 関東学院よ、なんじもか、である。近年、大学スポーツ界で不祥事が絶えない。婦女暴行、悪質暴力行為、陰湿ないじめ、そして今回の麻薬事件である。何でもありの大学スポーツ、という感じになってきた。

 今回の事件で、ラグビー部にも大学にも、いわゆる当事者能力がないことが、はっきり見えた。大麻栽培の2名が逮捕されたあと、春口監督自ら160名の部員の1人1人に、事件への関与をたずね、全員が否定していたのだが、最初に起訴された2人が、警察でほかの複数の部員も吸ったと供述したことから、深刻な事態であったことが、はじめて知られた。脇の甘い学内の調査に基づいて、学長をリーダーに調査対策設置委員会を設置した直後に、10人の警察の事情聴取が出たのだから、何ともお粗末だ。

 こうした一連の流れを見て、いろいろ考えさせられた。

 @160人という部員が多すぎるのではないか。来るものは拒まず、はいいとしても、レギュラーは15人。サブを入れても、試合にかかわるのはせいぜい30人位だろう。あとは練習に明け暮れるだけ。レギュラーの座から遠い選手のモチベーションは、低下しがちになるだろう。補欠、と十把一からげにするのではなく、それぞれのレベルにあわせ幾通りもの対外試合ができる仕組みを考えるべきだ。一度も母校代表のジャージを着ることなく卒業するのは正常ではない、と考えたほうがよい。リーグの枠を越えて、いくつものレベルの試合ができるように、知恵をしぼってほしい。誰だって試合に出たい。

 A部活動の密閉性にも問題がありそうだ。合宿所で寝泊りし、部活動にあけくれる毎日は、閉じられ囲い込まれた場所に密閉されている、といっていいだろう。もっと地域に開かれた部活動でありたい。たとえば、月に1〜2回は、同じ地域にある小・中学生とラグビー交流をしてみる。ラグビー以外のスポーツで交流をはかってもいい。大学の中で、さらにスポーツの部活動の中に閉じこもり、そこにぬくぬくと安住することなく、できるかぎり地域に開かれた、オープンな部活動を目指すことだ。そのことに心をくだけば、自ら部活動の質も上ってくるはずだ。

 B続発する事件をみると、チームスポーツのクラブに多いように思える。個人種目の陸上や水泳、柔剣道・・・などには、あまり事件が起こっていないような気がする。一種の集団性が大学の部活動のからむ事件の特徴ではないか。赤信号みんなで渡れば怖くない。チームワーク、和の精神を徹底しようとするチームスポーツの特徴が、悪い方に出ると集団暴行などにつながりやすいようだ。一人ではできない。仲間があればできる。やってしまう。自立、自律、自己責任からはるかに遠い精神構造がつくられるのは、何とも皮肉なことだ。スポーツは自律した人間にこそふさわしく、自立した人間を作るのがスポーツなのだが、逆作用になってしまう弱い一面がある。ゴーイング・マイウェイが基本、その上での和、強調、連帯、仲間意識、である。集団の依存性が強まる。モノ余りの時代に自立した人間になるのは、決してなまやさしいことではない。

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