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vol.339-2(2007年2月16日発行)
滝口 隆司 /毎日新聞大阪本社運動部記者
大学サッカーに復活のうねり

 14日に発表されたサッカー日本代表候補合宿のメンバーに、唯一の大学生として流通経大のGK林彰洋が入った。このほどU22(22歳以下)の日本代表に選ばれたばかりの19歳が、A代表にも名乗りを上げる可能性が出てきたのだ。アマチュア選手が招集されるのは98年の市川大祐(当時清水ユース)以来9年ぶりという。ここに、サッカー界の変化を読み取ることはできないか。

 Jリーグの発足以降、大学サッカーの地盤沈下は激しかった。高校を出た優秀な選手はこぞってプロの世界に入り、かつて日本サッカーの屋台骨であった大学は時代に取り残された感があった。

 ところが、いつの間にか大学は競技環境を整え直し、復活への足場を固めてきたように見える。事実、2005年にトルコで開かれた大学スポーツの祭典、ユニバーシアードで日本は3連覇を果たし、日本の大学サッカーのレベルの高さを証明した。

 今、早大のMF鈴木修人(4年)、MF山本脩斗(4年)、FW渡辺千真(3年)の3選手がスペイン一部リーグの名門、バレンシアの練習に参加しているという。驚くのは早大がバレンシアと提携関係を結んでいることだ。Jリーグのクラブならまだしも、大学が外国のプロクラブと手を組むのは異例中の異例。大学の強固なバックアップにより、国際的な経験を選手に積ませ、レベルアップを図る。さらに早大は元清水エスパルスの大榎克己氏を監督に据え、元プロのOBを指揮官に強化を進めている。早大だけではない。関西学院大の監督に、元日本代表監督である大学OBの加茂周氏が就任するというニュースも最近伝わってきたばかりだ。

 Jリーグでは大学出身者の人気が高まっているようだ。今年度のJ1(18クラブ)内定者68人のうち大学出身者は22人で、高校出身の18人を上回る数字になっている。

 では、かつてのように、サッカー選手はなぜ高校を出てすぐにプロ入りしなくなったのか。引退後のセカンドキャリアも見据えて、大学に進む傾向が強まっているのだろうか。Jリーグのレベルが上がったため、大学で力をつけてプロを狙おうとする風潮が高まったのか。またはJリーグの新人選手に対する待遇が以前ほどではなくなったのかも知れない。

 さまざまな要因が考えられるが、そんな中にあっても、各大学がスポーツの強化に積極的に取り組み始めたという点は指摘していいはずだ。少子化時代、スポーツの強化は大学経営の重要な部分にもなっている。

 「大学復活」の現象がサッカー界全体にどんな影響をもたらすか。Jリーグのジュニアユース、ユース、トップチームへとサッカー一筋で上がってきた選手だけでなく、大学でサッカー以外の知識や経験を身につけた選手が活躍することは、将来のサッカー界にとっては大きなプラスになるだろう。ワールドカップに勝つ戦力を整備していくことはもちろん大切だ。しかし、それが低年齢からのエリート教育だけでは底が浅い。幅広くサッカー界を眺めれば、将来を担うたくましい人材が眠っているに違いない。

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