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vol.421-1(2008年10月20日発行)

岡崎 満義 /ジャーナリスト
二番打者の新しいイメージ

 レッドソックスのペドロイア二塁手のことは、前に書いたことがあるが、また書きたくなった。小柄なペドロイアが縦横無尽にグラウンドをかけ回る姿を見ていると、こちらまで元気が出てくる。昨年はア・リーグの新人王、今年は有力なMVP候補だという。2番打者が素晴しいと、こんなに野球は面白くなるのか、と思う。

 ヤンキースのジーター選手と並んで2番打者の双璧だろう。バントなどの小技の利く、器用で足が速い2番打者、というのが、これまでの典型的な2番打者のイメージだが、ペドロイアは小柄ではあるが力強いフルスイングで、ときにホームランもかっ飛ばす強打者、打線を大爆発させる重要な打者、そんな二番打者だ。

 かつて、西鉄ライオンズ全盛時代に、三原脩(おさむ)監督が「流線型打線」を提唱、そのカナメは二番打者だ、と言ったことがある。三原ファンのある物理学専攻の学生が、流体力学を応用した打撃理論を三原監督のもとへ送ってきた。それにヒントを得て提唱したのが「流線型打線」理論である。その言葉に新鮮なひびきがあった。3、4番打者が強打者であることは変わらないが、2番打者に注目することで、それまでの打撃の常識を破ろうとした。豊田泰光という荒削りながら力のある高卒新人の入団を見て、三原監督は彼を2番に固定し、少々のエラーには目をつぶって、豊田遊撃手を使いつづけた。高卒ルーキーの29本塁打記録は清原選手が登場するまで破られなかった。昭和30年代前半の西鉄ライオンズの黄金時代は、この流線型打線と、「超二流」河野昭修選手の存在が大きかった、と思う。

 河野選手のポジションはもともとサード、そこにスーパールーキー中西太選手が入ってきてショートへ、次の年は豊田選手の入団でセカンドへ、セカンドでも仰木彬選手が入ってきて押出され、ファーストへ。今でいうユーティリティ・プレーヤー、どこでも守れる万能選手、という存在だが、それを「超二流」と名付け、打率は2割7分程度でも、ふしぎにチャンスに打ってくれる運の強い選手、と、新しいイメージを彼に与えた。

 故・青田昇さんによれば「日本のプロ野球の近代化は、三原監督から始まった」ということだが、“三原マジック”とも呼ばれた三原野球は、そういう言葉のイメージの作用を確信するところから始まったのではないか、と思ったりする。

 何事でも「不易流行」がある。変わらぬものと、変わるもの。野球にも不易流行があるはずだ。三原監督の流線型打線や超二流は、野球の「流行」の一面を鮮やかにうつし出してみせてくれたイメージだろう。

 ペドロイア二塁手の話からとんだところに発展してしまったが、三原監督のような「流行」の新しいイメージを、これからもみたいものだ。イチローという登録名をつけた仰木監督や長嶋茂雄監督に野球の「流行」面でのイメージの斬新さがあったように思う。それがあれば、野球はやはり面白い、と思える。まずはそういう言葉の人の出現を待っている。

 来春のWBCの代表監督に星野仙一氏が最有力、と報じられているが、星野野球は「流行」からはずれたイメージしかないことが北京五輪で明らかになったのに、なぜそうなるのかさっぱりわからない。「北京のリベンジ」「世界一しかいらない」という言葉は、聞きたくない。

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