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vol.403-3(2008年5月30日発行)
滝口 隆司 /毎日新聞大阪本社運動部記者
「グリーニー」はどこまで蔓延しているのか?

 「コミッショナー代行が会見する。どうやらドーピング違反の発表らしい」。そんな情報が入ってきたのは26日の夜だった。会見で明らかになったのは、巨人のルイス・ゴンザレス内野手の興奮剤使用。しばらくして、その興奮剤の内容が伝わってきた。

 ゴンザレスは4月30日に東京ドームであった広島戦の後、他の3選手とともに抜き打ち検査を受けた。その結果、ゴンザレスの検体(尿)からは、3種類の興奮剤が検出された。クロベンゾレックス、アンフェタミン、パラヒドロキシアンフェタミン。興奮剤のドーピング違反といえば、軽微なものなら、風邪薬の服用でエフェドリンなどが検出されるケースがある。しかし、ゴンザレスの場合は3種類。しかも、こうした薬物の検出は、通称「グリーニー」と呼ばれる薬物を摂取した場合の特徴であることも浮かび上がってきた。

 この薬物のことを調べてみると、過去にもプロ野球選手の間で利用されていたことが分かる。覚せい剤使用で逮捕された選手は、裁判で現役時代に「グリーニー」を使用していたことを明らかにしている。また、パ・リーグのあるチームで複数の選手が使用していたと週刊誌が報じたこともある。

 ゴンザレスはグリーニーの使用を否定しているが、3種類もの興奮剤の成分が検出されたことから考えると、「無実」などとはだれも思わないだろう。むしろ、これは球界の水面下で広がる薬物蔓延の氷山の一角が表面化しただけではないか、という気さえする。

 緑の錠剤であることから、「グリーニー」という名称で呼ばれている薬物である。興奮剤の作用として、神経の興奮によって集中力が高まるだけでなく、疲労回復やダイエット効果もあるという。選手がどんな目的で使用するのかは分からないが、競技力を高めるだけでなく、ドラッグとしての覚せい作用に手を染めていくケースもあるのではないか。日本では覚せい剤取締法の適用薬物でもある。今回、立件は見送られたが、日本プロ野球組織(NPB)は警察に通報したという。

 プロ野球選手の間でこのような薬物が広まっているのだとすれば、入手ルートの徹底調査が必要だ。しかし、だれが調査するのだろう。警察か、NPBか、球団か。法律違反の疑いが強まれば、警察当局が動くのだろうが、まずはプロ野球界自らが自浄作用を見せなければならない。ドーピング検査で違反が発覚すれば、その選手に処分を科して手続き終了となるのが通常の流れかも知れない。今回のゴンザレスの例も同様だが、これで事が済んだと思われては困る。

 巨人はゴンザレスを即座に解雇した。契約が解除されたのだから、巨人がいくら追跡調査をしようとしても、ゴンザレスは応じる必要がない。日本のプロ野球の登録選手でもなくなるのだから、NPBの調査も及ばない。それでベネズエラに帰国してしまえば、結局はトカゲのしっぽ切りで終わってしまうだけだ。

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