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vol.454-1(2009年6月22日発行)
松原 明 /東京中日スポーツ報道部
「世界と互角に渡り合うには」
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 サッカーW杯アジア予選最終日は、オーストラリア代表に逆転負け。3年前、ドイツ大会でやらえたときと、全く同じパターンの完敗だった。前半は日本ペースだったが、後半に彼らが力を発揮してくると、何もできず相手のなすがままだった。

 オーストラリアは主力選手を休ませても、控えメンバーが力がある。彼らの大半は激しいイングランド・プレミア・リーグで常にプレーしている強みがあり、その差が最後に明暗を分けた。今の日本はいかに、強国との対戦に慣れていないか、がはっきり見えた試合だった。

 世界には、オーストラリア以上の、フィジカルが強くたくましい、スピードのある国がまだ多数ある。

 前々から「欧州、南米の強国の胸を借りて、腕を磨かなければ、勝てない」と主張してきたが、あと1年間の準備期間に、どれだけの相手と試合ができるかが、極めて困難な課題だ。

 岡田監督は「欧州のイタリア、ドイツ、スペインの強国にぶつかり、頭を下げてお願いしても、勝負させて欲しい」と自ら交渉し、この難問を解決したい考えだが、国際マッチデーは、Jリーグの日程とぶつかり、簡単に遠征はできない。Jリーグの多くの日程を犠牲にしなければ、実現は不可能である。まして強国はメリットのない日本には来日はしない。

 これまで日本は、フランス、ドイツ大会の1次予選6試合で、1勝もしていない。日本よりはるかにW杯出場経験の多い韓国でさえ、欧州の本舞台で1勝するまで、時間がかかったことを思うと、前途は多難だ。

 現在のメンバーでドイツ大会の出場経験者は、DF・中澤、駒野、MF・中村俊の3人しかいない。GK・楢崎、MF・遠藤はメンバーに入っていたが出場していない。

 ドイツ大会のときは各大陸代表出場のコンフェデレーション杯3試合に出場し、アメリカ遠征、欧州遠征も行い、今の代表よりはるかに多くの強国との対戦経験を積んでいた。それでも勝てなかったのである。この壁を越えるのは至難のワザであろう。

 ドイツ大会直前、日本代表はドイツ入りしてレバークーゼンでドイツ代表と対戦したとき、前半、高原、柳沢の高速パスワークで2−0とリードした。しかし、後半、この2人は故障、日本の動きを分析したドイツ代表は、巧妙に反則を誘い、2本のFKで難なく同点に追いつき、引き分けた。「日本を崩すにはこの手でやればいい」という、ヒントを各国に与えた試合になった。この強国の激しい当たりに崩され、セットプレーを与えてしまう弱点は、いくら非公開
の、身内の練習をしても解決できないのである。

 強国相手に対戦未経験の選手たちが、自分たちの常識を越えるパワーで襲われたとき、対応する方法が体に染みこんでいない。これは、Jリーグの試合では経験できないプレーなのだ。

 ドイツ大会後、約3年間も強国と対戦していないハンディは大きい。1日も早く欧州へ修行に出かけ、もまれてくる以外にないのだが、日本全体でサポートしなければ実現しない。その上、南アフリカ大会は、未経験の高地での試合。寒暖の差が激しい気象条件が待ち構えている。よほど準備を重ねないと、驚くことばかりで戸惑うはずだ。

 「あと1年しかない。時間がない」という岡田監督の言葉は、日本の置かれた立場を分かっているからこその叫びだろう。しっかりと準備ができないまま、本大会を迎えれば、1次リーグを突破することさえ難しい。かつてないほどの困難が予想される南アフリカ大会になるのではなかろうか

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