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vol.461-1(2009年9月7日発行)
滝口 隆司 /毎日新聞運動部記者
学生野球憲章改正の象徴は「週休1日」だ

 高校、大学野球の「憲法」ともいえる日本学生野球憲章の改正案が発表されてからほぼ1週間が過ぎた。特待制度の問題をきっかけに見直しが始まり、ついに改正の第1次案が完成した。現憲章の25条は全面的に改正されて35条に増え、解説文も含めた分量はA4版47ページに及ぶ。

 われわれ毎日新聞では、1週間をかけて「変わる学生野球 憲章全面改正」という企画を連載した。憲章改正案の全文を紙面で紹介することは難しいが、せめて改正のポイントをつぶさに見てみよう、という趣旨だった。私は今回の改正の根本姿勢は、第10条に象徴的に示されているように思う。

 「野球部の活動は、部員の教育を受ける権利を妨げてはならず、かつ部員の健康を害してはならない」と掲げた上で、「加盟校は、前項の目的を達するために、野球部の活動の時期、時間、場所、内容などについて配慮をしなければならない。この場合、原則として1週間につき最低1日は野球部としての活動を行わない日を設ける」ことを求めている。

 週に最低1日の休養日を設けることは、過去にも日本高校野球連盟の加盟校への通達で提示されたことがある。しかし、今回はこれを「憲法」に明記したというわけだ。そこには、特待生を含めた多くの野球部員が「野球漬け」の毎日を送っているという実態がある。憲章改正案の解説文には「日常の学生生活において、野球に偏重した活動は厳に戒めるべきであり、野球部員たる前にまず学生であるということを忘れての部活動は断じて許してはならない」と強調されている。

 連載企画の取材にあたった同僚記者から「NCAAの規則はもっとすごいですよ」という話を聞かされた。全米大学体育協会(NCAA)の規則集は、今回の学生野球憲章の改正の参考にもされたという。

 「Playing and Practice Seasons」と題された項に、あらゆる競技の試合・練習のシーズンについての規定が記されている。「すべてのスポーツにおいて、(NCAAの)加盟団体はその練習活動、シーズンの期間や試合数について制限を設けるべきである」との方針が掲げられている。

 そのルールはきわめて具体的であり、ゴルフなど一部競技を除き、1日におけるスポーツ活動は4時間以内、週における活動時間のトータルは20時間以内という制限がついている。また、競技ごとにシーズンの開始日、終了日が定められている。野球の場合、来年は練習が1月28日、試合は2月19日から開始してよいと定められ、秋のNCAA選手権最終日がシーズンの終了日となる。これに加え、1シーズンに試合を出来る数も決められ、野球は1チームあたり56試合までとなっている。

 これらの規則の根底に流れるのは「学生をスポーツ漬けの生活にしてはならない」という考え方であり、バランスのとれた人間を育てていくという教育思想があるのだと思う。学生野球憲章は11月の第2次改正を経て来年2月の協会評議員会で決まり、4月から施行される予定だ。新憲章の意図するところ、そして真の理念が、全国各地の指導者に伝わることを期待したい。

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